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リレーインタビュー第66回 50(フィフティ)さん(後編)

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、【FIVE O DANCESTUDIO】を運営するダンサー、振付師、演出家の50(フィフティ)さんです。

野球、サッカー、体操と子どもの頃から体を動かすことが大好きだった50(フィフティ)さんが中学生の頃に出会ったのがダンス。初めはストリートで踊っていましたが、18歳で東方神起の全国ツアーに参加。その後はBoA、DREAMS COME TRUEなど一流のアーティストのバックダンサーとして活躍。プロフェッショナルの凄さを目の当たりにして多くのことを学ばれたそうです。現在はダンサー、振付師、演出の仕事と同時に、パートナーのLINAさんと運営する世田谷区のダンススタジオで子どもたちを中心にダンスのレッスンを行なっています。

スポーツにとって重要な「基礎」も、ダンスで「表現」する時には足枷になることもあるので、ただ教えるのではなく「子どもたちの自由な表現を常に大切にしている」という50(フィフティ)さんのお話を3回にわたってご紹介します。

(2025年11月 インタビュアー:松場俊夫)

前編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/66-1/

中編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/66-2/

▷ 50さんは多くのプロフェッショナルと接していらっしゃいますが、超一流の人と普通の人との違いは何だと思いますか?

プロになればなるほど、非常に熱い感謝の気持ちを持っています。おそらく支えてくれている人の数、それに比例する責任感の重さの違いだと思います。自分一人ではステージに立てないことをよくわかっているのです。また、一流の方ほどこだわりが強いと感じます。そんなに細かい一つ一つに気づくのか?と思うほど、誰も気づかないところにもこだわりを持っています。例えば、Nissyさんというアーティストがいて、彼は歌と踊りも演出も自分でしているのですが、私が振り付けをさせていただいた際に何度も修正、変更をしたことがあります。私的には100点の振り付けを「この歌はこういう思いで歌っているから、この部分はこうした方がいいのではないか」と指摘をいただきました。こうしたやり直しを照明、音響、レーザー、花火や煙などの舞台の特殊効果、カメラなど全ての箇所で何度も監督し指示するのです。Nissyさんだけでなく、他にもたくさんのアーティストさん、演出家さんも同じ想いを持っていました。非常に時間がかかることですが、それだけお客さんを楽しませたい思いが強いのです。エンタテインメントの世界ではそれだけこだわれば必ず良いものになりますから、お客さんの満足度も違います。私はそれだけこだわることのできるエネルギーの強さに「一流」を感じます。

▷ 50さんご自身の感性や成長はどのように高めているのですか?

一緒に仕事させていただいているアーティストやダンサーの方々から良いバイブスをもらっています。アシスタントのようなこともさせていただいていますし、振付師さんに興味があったら、オーディションやワークショップを受けさせてもらったりもします。まだ実ったことはありませんが、俳優業のオーディションも受けたりしています。ダンス以外でも表現することは好きなので、ダンスとは全く違う演技という表現をする舞台にも挑戦してみたいと思っています。今後も舞台やさまざまなものを見に行ったりして自分の幅を広げていきたいと思っています。

▷ 子どもたちを指導する上で譲れないものは何ですか?

すぐに諦めないでほしいということです。嫌いになったら辞めてもいいですが、もしダンスが好きなのであれば簡単に諦めないでほしいです。辞めたくなったり嫌いになりそうになっても、続けることで必ず良い景色を見ることができます。

それから、ダンスに限らず「継続は力なり」。継続の大切さも伝えられたらいいなと思っています。基礎は音楽をしっかり表現するためのものなので、ひたすら教えることも大切ではありますが、基礎から入るとそれだけになってしまう可能性もあります。ですから、何のために今この練習を頑張っているのかをしっかり伝えていきたいです。基礎の先に生み出されるダンスの楽しさや感情の表現があるのです。

▷ 50さんがダンスをしていて一番楽しいと思うのはどんな時ですか?

生徒、仲間と踊る時や、やはり人前で踊っている時ですね。私はあまり緊張しない方なのですけど、ソロは特に緊張します。自分しかいない空間で、見ている人をどれだけ世界観に引き込められるか、全員を魅了して踊れるか、嘘をつけない状況というか、そういった時は感情が高まります。

▷ レッスンに関してどのようなビジョンをお持ちですか?

ダンスを通して自己肯定感を高めてほしいと思います。身体操作という点でも、好きな音楽で好きなように自由に踊れますから、ぜひ成長の糧にしてほしいです。それから、ダンスを通して家族が仲良くなってほしいですし、地域の友達との関係も深めてほしいと思っています。発表会などでは保護者の方たちのサポートが必要になります。送り迎えや衣装の手配、多くの保護者の方たちが見にきてくれて、保護者の方が踊れるクラスもあります。ダンスを通して、うちのスタジオを通して、コミュニティが広がってくれたら嬉しいですね。

また、私がスタジオを出てメジャーの仕事をさせてもらうのも、生徒さんたちにプロフェッショナルの世界をたくさん観てもらいたいからです。ただ踊るだけではなく、ダンスをする先にはこんな素晴らしい世界があって、そこに自分たちの先生がいたら世界が広がるかなと思うのです。そこには一流のプロフェッショナルの方たちが作った作品がたくさんあります。生徒さんたちが一流のものに触れるきっかけとして自分の存在があれば嬉しいです。

もともと地域でダンススタジオをやろうと思ったのは、自分の子どもたちに居場所、地元を持ってほしかったからですし、私も妻も友達が欲しかったからです。引っ越してきたばかりの頃は友達ができない時期がありましたから、ダンスが一つの武器になってくれたらいいなと思って始めたところもあります。人と人が繋がるきっかけとしてこのスタジオやここで体験するダンスがあってくれたら嬉しいですね。

▷ 保護者の皆さんとのやりとりで工夫していることはありますか?

発表会はまさに工夫だらけです。どれだけ細かく時間を決めてシミュレーションしても穴ができてしまいます。チケットの販売もそうですし、20チームともなると人数もかぶるので時間割が大変です。言葉選びから時間設定からスタッフと何度確認しても伝わらない時は伝わらないので本当に大変です。どれだけ丁寧に説明したつもりでも、これでは伝わりませんと言われたこともあります。

普段では、送り迎えの保護者さんと積極的に話すようにしています。コミュニケーションを取っているおかげでさまざまな気づきを与えていただいています。支えてくださる人が増えれば増えるほど、私たちは丁寧に一つ一つやっていかなければならないと思っています。子どもたちの鏡にもなりたいのでだらしない姿は見せられません。子どもたちにはかっこいい大人にどんどん接してほしいですからね。

▷ 50さんにとって、かっこいい大人とはどんな大人ですか?

笑顔が素敵な人。時間も約束もちゃんと守る人。そういうことを難なく無理なくできる人。当たり前のことを当たり前のようにスマートにできる人、でしょうか。あとは、挑戦し続けている人は大人子ども関係なくかっこいいですね。

▷子ども達と接する時に指導者はこうあってほしいと思うことはありますか?

子どもたちとできる限りコミュニケーションをとってほしいです。学校で何があった?どんなテレビが好き?といった日常会話で良いのです。学校ではなかなか自分を表現できない子も、ダンスのスタジオでは学校の先生に言えないこと、家族に言えないことを先生にのびのびと話せたりします。それはその子にとってスタジオが良い場所であるからですし、話を聞いてくれる人はその子にとって記憶に残る人になるはずです。

▷ 全国の指導者にメッセージをお願いします。

私たちは子どもたちの未来を作る一人でもあるので、それが地域の小さなクラブでも、世界を相手にする選手やチームでも志は一緒だと思います。どの生徒さんもい、共に成長できると良いなと思います。押し付けるのではなく共に教え合い、支え合いの精神で指導を続けていきたいと私は思っています。(了)

(文:河崎美代子)

◎50(フィフティ)さんプロフィール

【FIVE O DANCESTUDIO】運営

2007年よりトップアーティストのステージに立ち続けるダンサー/振付師/演出家

東方神起・BoA・DREAMS COME TRUE・Nissy・木村拓哉をはじめ数多くのアーティストをサポートし、出演ライブは通算1000回近く、ドーム出演は150回超。日本人ダンサーとしてドーム出演最多クラスの実績を誇る。

さらにSHINee・NCT127・超特急の振付、西野カナ・PrizmaXのステージング演出を手がけるなど幅広く活動。

現在は世田谷区鎌田(二子玉川校)・狛江駅前狛江校で「FIVE O DANCE STUDIO」を運営し、次世代の育成にも力を注いでいる。

【関連サイト】

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