「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、【FIVE O DANCESTUDIO】を運営するダンサー、振付師、演出家の50(フィフティ)さんです。
野球、サッカー、体操と子どもの頃から体を動かすことが大好きだった50(フィフティ)さんが中学生の頃に出会ったのがダンス。初めはストリートで踊っていましたが、18歳で東方神起の全国ツアーに参加。その後はBoA、DREAMS COME TRUEなど一流のアーティストのバックダンサーとして活躍。プロフェッショナルの凄さを目の当たりにして多くのことを学ばれたそうです。現在はダンサー、振付師、演出の仕事と同時に、パートナーのLINAさんと運営する世田谷区のダンススタジオで子どもたちを中心にダンスのレッスンを行なっています。
スポーツにとって重要な「基礎」も、ダンスで「表現」する時には足枷になることもあるので、ただ教えるのではなく「子どもたちの自由な表現を常に大切にしている」という50(フィフティ)さんのお話を3回にわたってご紹介します。
(2025年11月 インタビュアー:松場俊夫)
前編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/66-1/
年齢も体格もみな違うので、同じように踊るのは難しいのですが、音楽のジャンルは何か、どう表現するか、作品のテーマは何かといったことを私も入ってチームでしっかり話し合うようにしています。「この曲を表現するにはこうしたらいいと思うけど、どう思う?」という具合に。生徒たちがこういうふうにやりたいという希望を大切にしながら一つの作品に臨みます。ダンスの技術は私が生徒に教えられますが、生徒たちから学ぶことがとてもたくさんあります。
例えば、作品の中に一人ずつソロを入れたりもするのですが、「どう踊りたい?」と聞いたらある子が「側転したい」、次の子も「側転したい」。私が作ったら二人連続側転することはないのですが、生徒たちの気持ちは優先するようにしています。「自分が自分が」の気持ちは大人になるにつれてなくなっていきますから、子どもらしい気持ちを尊重して「やりたいことやろうよ」と。生徒たちもダンスを習い始めると形にはまっていくところがありますが、自由な発想がまだまだありますし、私が感じたことのない感性を持っています。そんなところが子どもたちのレッスンの楽しいところですね。
ミラーリングをやったり、振り付けだけではなくフリースタイルを行います。ダンスにこだわらず床に寝たり膝を立てたり、手で床を押したり蹴り出したり、壁から壁へ移動するクロスフロアも行います。何か制限を入れたり、ルールを決めた中でいかに自由に踊れるかなど、試行錯誤しながら生徒たちの幅を広げ、引き出しを増やすようにしています。
また環境を大切にしたいので、部屋を真っ暗にしたり、スタジオのミラーボールでクラブのようにしたりと、擬似体験も取り入れています。
大会への参加を目指すスタジオではないので、レッスンでは方向性はバラバラかもしれないですね。先生もさまざまな考え方を持っているので、先生の目標によってクラスのやりたいことや方向性はそれぞれ異なります。3つも4つもクラスを掛け持ちする子もいます。いろんなジャンルや方向性がバラバラであることがダンスの良さだと思うので、そこは気にしたことはありませんが、自由な中でも揃えるところや同じ目標を明確に持たせることは大切にしています。
例えば、同じヒップホップでも様々あり、楽曲の持っている雰囲気によって姿勢も見せ方も変わってきます。競技ダンスとして優勝を目指して頑張ろうという時には教え方も考え方も変わるので生徒も戸惑うと思いますが、根本的にはうちのスタジオでは先生もジャンルも自由に選べるので、自分が好きなことを追求してもらえたらと思っています。

うちのスタジオのレッスンは月2,4,8,16回というシステムなのですが、月2回のクラスの生徒でも発表会に出られるようにしています。発表会の参加も担当の先生がOKなら1ヶ月前でも応募できるので、今日入会して1ヶ月後に大会に出ることも可能です。そういう場合に「練習が全然できていません」「月2回しかレッスンに行ってないので、みんなに追いつけません」という相談を受けた時には、パートを減らしたりして、無理がない状態で出てもらって大丈夫ですとお伝えしています。
人前に出ることは勇気も必要ですが、日頃の練習の成果を見せる場として目標に向かって努力をすることですし、仲間と踊ったり人に見られれば自分も興奮するので満足度や意欲も変わってきます。他の競技の大会なら「勝った負けた」になりますが、ダンスを始めるだけでも勇気がいりますし素晴らしいことです。発表があることでさらに喜びがあり、自信にも繋がります。ですから初めたばかりでも出てみたいという興味があれば、出演していいということにしています。
伸び悩んでいる生徒にも同じように「今自分ができる中で頑張ってみよう」とパートを削ることで負担を減らし、その子が満足できる仕上がりになるようにします。その上で「もっとやってみたかったら挑戦してみたり、できることを増やしていこう」と言います。無理を押し付けることはしません。一方、時間があったり、より意欲がある子は家でも練習してくれるので、生徒に合ったアプローチをします。押し付けることはできるだけせず、まずはダンスを嫌いになってほしくはない。自分が好きなようにのびのびとやってほしいです。
普段のレッスンでも発表会でも、フタコハートストリートという地元のイベントでも、子どもたちの引き出しの多さには驚きます。例えばフタコハートストリートは公募でチームを募集しており、スタジオ以外の子どもも参加可能です。スタジオから応募してくれた子たちのチームには先生は関与せず、曲選び、振り付け、衣装選びも全て自分たちでやります。もちろん保護者の方たちのサポートがありますが、子どもたちが主導してやります。
フタコハートストリートは二子玉川の商店街のイベントなのですが、ここ6、7年ほど私たちが企画・プロデュースをさせていただいています。今年のステージは360度どこからでも見られるセンターステージという形にして、「君たちはA側の二子玉川商店街を向いて、君たちはB側の玉堤通り方面を向いてパフォーマンスをして」とお客さんを分散する意味でもそう設定しました。子どもたちがいつもみているTikTokもYouTubeも二次元ですが、「このステージは後ろにも横にもお客さんがいるから、どこから見られてもいいようなパフォーマンスを心がけて作ってね」と。
そうすると何も指示していないのに6人のグループが3人は前、3人は後ろというような構成を子どもたちが作りました。小道具を使ったり、紙芝居のようなことをやったり、「そんな発想自分にはなかったな」というようなこと、大人がやらないことをやってくれました。今ハマっているバスケットボール回しをソロダンスに取り入れていました。子どもたちの引き出しの多さには本当にワクワクさせてもらっています。
チームの指導はしませんが、普段のレッスンの振り付けを使うことはO Kにしたので、基礎的な体の動かし方や振り付けの考え方は指導しました。また曲の意味なども伝えるようにしていました。
私自身、プロのステージに出させていただいて世界が一変しました。ストリートで踊っているだけでは、誰にも迷惑はかかりませんが、それと同時に見向きもされません。でもプロのステージはお客さんが100人のこともあれば5万人以上のこともある。それだけの人が一つのものに熱中して、そこにダンサーとして立たせてもらっているというのはすごい経験です。何も考えずに踊れていた若い時とは違った楽しみがあります。
一方で、5万人規模のイベントになるとスタッフは200人から300人いて、費用は何十億円もかかっていますから、ダンスへの責任感、そのアーティストの音楽性を体で伝えるという責任感も強くなりました。「全身全霊」という言葉があるように、その気持ちもますます強くなりました。センターステージは関わらせていただいているDREAMS COME TRUEや東方神起、Nissyのライブステージでもやっていることで、アーティストたちは一番端の座席にいるお客さん、一番遠くの座席にいるお客さんにも届くようにパフォーマンスしています。地域のイベントでも同じように、人前で踊る以上、目の前のお客さんだけでなく一番遠くにいる方へ届くように、何よりも全身全霊でパフォーマンスするということを大事にしつつ、その精神を指導しています。(後編へ続く)
(文:河崎美代子)
◎50(フィフティ)さんプロフィール
【FIVE O DANCESTUDIO】運営
2007年よりトップアーティストのステージに立ち続けるダンサー/振付師/演出家
東方神起・BoA・DREAMS COME TRUE・Nissy・木村拓哉をはじめ数多くのアーティストをサポートし、出演ライブは通算1000回近く、ドーム出演は150回超。日本人ダンサーとしてドーム出演最多クラスの実績を誇る。
さらにSHINee・NCT127・超特急の振付、西野カナ・PrizmaXのステージング演出を手がけるなど幅広く活動。
現在は世田谷区鎌田(二子玉川校)・狛江駅前狛江校で「FIVE O DANCE STUDIO」を運営し、次世代の育成にも力を注いでいる。
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