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リレーインタビュー第67回 柴田大(おおき)さん(前編)

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、ナショナルスノーボードデモンストレーターの柴田大さんです。

 リゾート関連の会社に入社しスキー場の仕事についたことをきっかけに25歳からスノーボードに本格的に取り組み始め、主に指導者を対象にした全日本スノーボード技術選手権大会で活躍、選考会を経てナショナルスノーボードデモンストレーターに認定されました。

 夏はゴルフ、冬はスキー、スノーボードができる環境で働きながら、デモンストレーターの活動を行なっている柴田さん。常にお客様に寄り添うことを心がけ、何よりも人とのつながりを大切にしていると言う柴田さんのお話を3回にわたってご紹介します。

(2025年12月 インタビュアー:松場俊夫)

▷ 現在の活動について教えてください。

普段は普通の会社員として、冬以外はゴルフ場で勤務しています。キャディさんの管理やスケジュール作成といった運営の業務と営業を兼務しており、スキー場に移動してくるのは12月の半ば頃です。2、3年前まではスキー学校の責任者をしていましたが、現在は別の人に引き継ぎ、事務所の方でレジ打ち、チケット売り、インフォメーションの案内といった雑用もしています。以前からやっていたイベントの仕事は今も続けています。スキー学校ではインストラクターを取りまとめてレッスンに送り出したり、怪我の対応をしたりという運営が私の仕事で、直接指導するのはインストラクターが足りない時だけでした。

▷  スキーやスノーボードを本格的に始められたのは入社後だったそうですね。

社員としてスキー学校に勤務することになったものの、スキーもスノーボードもちゃんとできない、よくわかっていないという状況では指導員の方たちに示しがつかないので、指導者の資格を取ることにしました。当時は、初めにスキーのバッジテストで1級を取らないとスノーボードを行うことが許されない厳しい環境でしたので、まずスキー、それからスノーボードの1級を取り、両方の指導員と検定員の資格を取りました。

インストラクターには技術選手権大会という大会があり、毎年出場していた仲間から誘われたのですが、いきなり出場するのは無理なのでとにかく練習しました。この大会はスキーもスノーボードも滑りの正確さ、綺麗さ、キレ、演技力を競うもので、教育部としての大会にあたるので、競技部のようにアルペンでの速さ、ハーフパイプでの高さや技を競う大会ではありません。

この大会の中でデモンストレーターの選考会が2年に1度あります。デモンストレーターというのはインストラクターの模範としてトップレベルの技術を持ち、技術向上、普及、文化の発展を目的として活動する人材です。スノーボード教程を作ったり、バッジテストの模範を行ったり、全国各地で講習を行ったりします。ここ数年ではSNSでの発信も重要視しております。

デモンストレーターの選考は、本大会の成績と選考会での成績を合わせた中での総合点が高い順に選ばれます。見せる演技力や表現力が必要で、面接で人間性も見られます。スノーボードのデモンストレーターチームはナショナルの男性3名、女性1名以下、合計16名いるのですが、私はナショナルデモンストレーターに認定されている関係で、選抜メンバーとして今回10日間ほど中国に派遣されました。(3月5月にも同様の派遣が予定されています。)全日本スキー連盟と中国の旅行会社が提携し、アジアで非常に評価が高い日本の技術を売りに集客するという相互交流を図るものです。ただしこれは会社の業務ではないので、休みを取らせてもらい中国に行かせてもらいました。

▷  外人もいれば大人も子供もいるという、スキー学校の多種多様な生徒さんとの関係作りはどのように行なっているのでしょうか。

レッスンにおいてはまず生徒さんに寄り添うことでしょうか。私たちには当たり前にできることが生徒さんにとっては全く初めてのことだったりするわけです。まずは寄り添って共感するよう努めます。お客様目線よりも一歩踏み込んで対応します。

それから、これは人数にもよりますが、一人一人にかける時間を大事にします。それをしないと生徒さんはついてこないので全体のバランスを見て対応します。例えば、大人も子どもも初めての人は何もできないので、面倒くさがらずに私が自ら動くようにします。口ばかりで体を動かさない指導は良くないと思うからです。その都度生徒さんのところに行って、ブーツの履き方からチェックしてあげます。ブーツが緩いとうまくできないことがあるのです。そういう細かいところから見てあげると心を開いてくれますし、上達も早いです。

ただ、若い人たちは基本的にコミュニケーション不足ですね。それはすごく感じます。こちらが発しないと自分から発してくることがあまりありません。ですが中国の生徒さんはモチベーションがとても高く、皆いろいろと質問してきます。これはレッスンに来たきっかけにもよるのでしょう。面白いと思って自分からすすんで入ってきた生徒さんは積極的です。

私の今のテーマは「スノーボードをきっかけにその人の人生が豊かになる」ことです。特にスノーボードというのはスキーと形状が全く違います。バインディングもスキーは大体決まっていますが、スノーボードは好きなものを選べます。つまり多様性のあるスポーツなので、最近「スノーボードダイバーシティ」を研修テーマにしています。こうでなければいけないというような押し付けはせずに、それぞれの特性や求めているものに寄り添い、互いに尊重し合い、価値観を認め合う、といったことを教育のテーマに取り入れています。例えば、ベースはある程度まで私たちが作りますが、そのベースの上にスピードやジャンプ、回転など多くの技があり、その中から自分が好きなものを選んでもらうようにしています。私が若かった頃は情報が少なかったので、親が言うことは絶対、先生の言うことが正解でしたが、今の時代、正解は一つではありません。「スノーボードはこうあるべき」と言うのはNGだと思っています。選択肢が増えればやる人も増える。それに基づいてコミュニティができていけば世の中は豊かになるのではないでしょうか。

▷  生徒さんに接する時に大切にしていることは何ですか?

普段の会話から入るようにしています。私と生徒さんの関係はもっと砕けたものでよく、生徒さんには緊張せずにリラックスしてもらいたいのです。上から目線ではなく目線を下げて「柴田先生と呼ばなくてもいいよ」と。ただし「周りの目は気にするように」と社会性も教えます。「ここでは楽しんでもいいけど、他の人が見たらふざけているように見えることもあるよ」と敬語の使い方を教えたりもします。他の学びからあまり得られないことを私が話すことで、生徒さんたちも色々と話してくれるようになります。やはり指導には雰囲気作りが大事なのだと思います。

たまにインストラクターが「生徒が言うことを聞かなかった」と話してくることがありますが、それは指導者側の伝え方が悪いからです。もっと踏み込まないといけないのに、それをめんどくさがるのは良くないです。またスキーやスノーボードは自然のスポーツです。山の天候やルールを知った上で山全体を遊ぶ楽しさを知れば気持ちよくなって、子どもはまた来たいと思いますし、子どもが来たがれば親も来ます。そういった意味でも最初の先生はとても重要なので、「生徒さんの人生を決めるのは皆さんです」と言うようにしています。一度ついた第一印象は取り戻せません。身だしなみも含め好印象を与えることは非常に大切です。(中編に続く)

(文:河崎美代子)

◎柴田大さんプロフィール

・ニックネーム:Ooki

・生年月日:1984年3月12日

・出身:山梨県富士吉田市

・職業:会社員

・趣味:ゴルフ、ショッピング

・所属:富士桜カントリー倶楽部、ふじてんスノーリゾート

・資格:ナショナルスノーボードデモンストレーター

    スキー正指導員、スキーA級検定員

    スノーボード正指導員、スノーボードA級検定員

・成績:2019年「第16回全日本スノーボード技術選手権大会総合8位」 

      :2020年「第7回甲信越ブロックスノーボード技術選手権大会4位」

:2021年「第8回甲信越ブロックスノーボード技術選手権大会1位」

「第18回全日本スノーボード技術選手権大会総合5位」

「第10回デモンストレーター選考会1位」

ナショナルスノーボードデモンストレーター認定

:2022年「第9回甲信越ブロックスノーボード技術選手権大会5位」

「第19回全日本スノーボード技術選手権大会総合13位」

:2023年「第10回甲信越ブロックスノーボード技術選手権大会7位」

SAJスノーボードデモンストレーター認定

:2024年「第21回全日本スノーボード技術選手権大会総合9位」

:2025年「第22回全日本スノーボード技術選手権大会総合13位」

「第12回デモンストレーター選考会2位」

ナショナルスノーボードデモンストレーター認定

Instagram:https://www.instagram.com/ooki.shibata/