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リレーインタビュー第23回 中塚泰子さん(中編)

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。

今回は、石川県金沢市のチアリーディングチーム「きらきらKids」代表 中塚泰子さんにお話を伺いました。

世界でもトップの実力を誇る日本のチアリーディング。子供たちにも大変な人気で、プロスポーツの試合でキッズのチームを目にすることも多くなりました。

中塚さんは大学時代にチアリーディングに出会い、卒業後、社会人チームで活動しながら指導を始め、現在、チアリーディングコーチングを主に活動なさっています。

コーチングを学んで指導がどのように変わったか、チアリーディングを通して子供たちに望むことなど、中塚さんのお話を前・中・後編の3回にわたってご紹介します。

(2020年7月 インタビュアー:松場俊夫)

前編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/23-1/

▷ 子供を信じるというマインドを持つことで喜びを感じたことはありますか?

ここ3年、順位のつかないエキシビションという部門に出場しているのですが、昨年秋の大会でのことです。本番直前の準備の場面で、子供たちが円陣を組んで、どんな演技をしたいか、など一言一言声をかけあっていました。そこで初めて「お客さんはもちろんだけど、お母さんたちを一番感動させたい」と言う言葉が出てきたのです。

結果、演技の中で一つミスがあったのですが、一つでもミスがあると賞は取れないと言われる中で敢闘賞をいただきました。それだけ伝わるものがあったのだと思います。

実は子供たちは「きらきらの笑顔でがんばるぞ」という合言葉を自分たちで決めていたのです。ただの笑顔ではなく、私たちらしい本当のきらきらの笑顔でがんばろうという気持ちが、会場のドアを開けて入ってきた瞬間に私にもわかりました。そこが評価されたのでしょう。私も感動しました。子供達を信じ、子供達自身から湧き出る言葉や想いに任せた結果だと思えた出来事でした。

▷ 子供たちの「お母さんたちに喜んでほしい」という思いは、どのようなところから出てきたとお考えですか?

大会を目指すようになってちょうど3年目ですが、保護者さんがとても協力的で、チアリーディングに「ハマって」下さっています。昨年の大会の時も、お母さんたちが大阪まで一緒に来て下さり、お揃いのTシャツを着て、子供たちが会場に入るぎりぎりまで手を振りながら「がんばって」と声をかけて下さいました。子供たちには普段から、練習の送り迎えをしてくれているお母さんたちに感謝しなさいと言ってはいるのですが、お母さんたちのそんな熱心な応援が嬉しかったのだと思います。

また、日頃から保護者さんたちにも「子供を信じる」ということを伝えているので、前向きな言葉をかけて下さる方が多く、子供たちにとって励みになっているのかもしれません。

▷ 一方では「保護者さんが難しい」という声も聞くのですが、中塚さんは保護者の方々にどのようなアプローチをされているのですか?

「チアスピリット」という言葉があるのですが、それは保護者さんにもお伝えしています。またイベント毎に、子供たちがこんなふうにがんばった、こんなところが良かったということを伝えて「帰ったらいっぱいほめてあげてください」とグループLINEでお伝えするようにしています。

チアスピリットとは、チアリーダーが活動する上での心構えのことですが、「きらきらKids」には5項目あります。人を応援する、元気づける時に大切なことです。

※ 「きらきらKids」チーム理念

☆相手をリスペクトし、思いやりのある言葉がけをします(コミュニケーション力)

✰仲間を大切にし、互いに支え合い、喜びを分かち合います(フレンドシップ)

✰気持ちを込めた挨拶や返事をします(マナー・社会性)

✰自分自身が勇気を持って発言し、発信者となります(リーダーシップ)

✰自分を律し、最高のパフォーマンスをするための努力を続けます(スポーツマンシップ)

このチーム理念については、リーダーシップやフォローシップなど少し難しいと思うようなことも、子供たちにある程度伝えています。どこまで伝わるかはわかりませんが、5、6年生の中には「うんうん」とうなづいて真剣に聞いてくれる子もいますし、私が驚くようなことを考えている子もいます。

▷ 「きらきらKids」にはリーダーやキャプテンはいるのですか?

大会に出場するチームについては、便宜上必要なので大会ごとのキャプテンを決めていますが、年間通してのキャプテンというのはいません。誰もがリーダーになってほしいという思いがあるからです。子供たちはキャプテンか否かに関わらず「もっと声出そう」「笑顔で頑張ろう」と言った声出しをよくしてくれます。

▷ ティーチングを中心にしていた指導者がコーチングを取り入れようとするとうまくいかないことがよくありますが、現在に至るまでに失敗はありましたか?
その際、どのような工夫をなさったのでしょうか。

練習後の締めの時に、今日できたこと、がんばったこと、よかったこと、うれしかったことを子供たちに言わせているのですが、初めはこれがなかなかうまくいきませんでした。できたことを聞いているのに「これはできたけどこれはできなかった」と言うことが多かったです。それまで私がそういう風に指導していたので無理はありません。ですからまずは「逆に言ってごらん。『これはできなかったけど、これはできた』と言うだけで気持が変わるよね」と言いました。できたことを言えるようにするために、何回も何回もできたことがなかったか聞きました。

ですが、子供たちは意外と切り替えが早いようで、思っていたよりも苦労はしなかったような気がします。やはり子供達自身が発言できるようになると場は変わっていきますね。できたことを言いたいから練習をがんばっているように見えることもあります。

▷ 指導していてつらかったこと、難しいと思ったことはありますか?

高校生の指導はいまでも難しいと思うことがあります。高校生に対しては子供よりも少々厳しくなってしまうところがあるのですが、私が指導できる練習は週2回、1~2時間程度なので、本人の内面に向き合う時間がなかなかとれないのです。高校生は小学生よりも技術面で取り組むべきことが多いですから。もう少し話をして個人的に関われば信頼感も上がると思うのですが。それが課題です。

また「きらきらKids」に関しては、能登地方は金沢市と比べて子供が少ないので、チームの存続に苦労しています。私自身が金沢市から1時間くらいかけて通っていますので、地域の実情を把握しきれていないところがあります。

▷ 子供たちの指導をする中で、大切にしていることは何ですか?

チアリーディングを通して成長するということでしょうか。チアリーディング選手として活動する時間は人生のほんの一部なので、チームの中でどんどん失敗して間違えて、そこからどうするか、どう工夫をするかを自分で考えて乗り越えてほしい。少しずつ自信を積み重ねて成長し、大人になった時に様々なことにチャレンジしてほしいと思っています。

 とはいえ、失敗は怖いものです。そんな時は私自身の失敗談を話すこともあります。「先生も小学生の時は自信が無くて手を挙げられなくて全然ダメだったんだよ。でも今はこんな風になっているから大丈夫だよ」と。昔できなかったことも今はできるということがたくさんあるんだよと伝えています。

それから、どんなに小さいことでもほめることは続けています。発言が苦手な子もいますから、発言で手を挙げただけでも「この間できなかったことが今日はできたね」とほめるようにしています。(後編に続く)

(文:河崎美代子)

◎中塚 泰子さんプロフィール

チアリーディングチームきらきらKids 代表

北信越チアリーディング連盟 理事

日本チアリーディング協会認定Class2 指導員

<経歴>

1981年 金沢市生まれ

2003年 筑波大学第二学群生物資源学類卒

大学在学時にチアリーディングを始め、主に体育会運動部の応援活動を行う。

在学中に指導員資格を取得

就職を機に金沢市へ帰省し、社会人チアリーディングチームを創設

仕事の傍ら北信越地区の講習会指導スタッフや高校チアリーディング部の

外部コーチ等を務め、現在はチアリーディングコーチングを主軸に活動している。

<主な指導歴>

2007年〜 石川県立金沢伏見高等学校チアリーディング部

2010年〜 チアリーディングチームきらきらKids

2011年〜 特定非営利活動法人かなざわ総合スポーツクラブ 

チアリーディング教室 他 教室指導

2020年〜 星稜泉野幼稚園 課外教室

【関連サイト】
チアリーディングチーム きらきらKids