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リレーインタビュー第23回 中塚泰子さん(前編)

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。
今回は、石川県金沢市のチアリーディングチーム「きらきらKids」代表 中塚泰子さんにお話を伺いました。
世界でもトップの実力を誇る日本のチアリーディング。子供たちにも大変な人気で、プロスポーツの試合でキッズのチームを目にすることも多くなりました。
中塚さんは大学時代にチアリーディングに出会い、卒業後、社会人チームで活動しながら指導を始め、現在、チアリーディングコーチングを主に活動なさっています。
コーチングを学んで指導がどのように変わったか、チアリーディングを通して子供たちに望むことなど、中塚さんのお話を前・中・後編の3回にわたってご紹介します。

(2020年7月 インタビュアー:松場俊夫)

▷ 現在の活動について教えていただけますか?

「きらきらKids」は2007年の能登沖地震を機に、能登を元気にしたいと言うことで設立されたチームです。前任の指導者の方は元々ダンスを教えていらしたのですが、チアリーディングの「人々を応援する」「人を元気づける」という精神に共感され、チアリーディングの指導者を探しておられました。そこで私が指導に携わることになりました。今から10年ほど前のことです。その頃はチアリーディングの技術を指導しており、スタンツという組体操をメインで教えていました。その後、前任の方が大阪に拠点を移されたので、2017年から私がチームを引き継ぎました。

▷ チームを引き継いで、指導のスタイルや考え方、子供との接し方に変化はありましたか?

2年ほど前、それまでの自分の経験に基づいた指導に行き詰まりを感じ、コーチングスクールで学びました。それ以来、一言で言うと「ほめて伸ばす」という形に指導ががらっと変わったと思います。一人一人の良いところを探すようになりました。

▷ コーチングを学んでから「ほめる」ことが増えたとのことですが、他に変わった点はありましたか? 

「その子の未来を信じる」という考え方をするようになりました。今できなくてもいつかはできる、今は少しふてくされている子もいつかは気づいて変わる、と。「可能性を信じる」ということを学んでから、ちょっとしたことで自分が振り回されることがなくなったように思います。子供が納得いかない態度を取ることがあっても、左右されることなく、その事実だけを見て対応し、ほめるところはほめる、というふうに変わりました。

元々子供が好きなので、かわいいのですよ。私には発達障害の娘がいるのですが、普通という基準で言うとできないことが多いのです。それでも、できなかったことができるようになれば、普通の子ならほめられないような小さなことでもほめます。そうすると本人も変わっていきます。そんな経験がチアリーディングの指導にも活きていると思います。

▷ 指導者になろうと思ったきっかけは?

スタートは高校生のコーチでした。前任の方が結婚を機に拠点を移されて後任を探していたのです。私は大学時代に指導者資格を取っていましたし、指導に少し興味もありましたので引き継ぎました。資格については、私が通っていた大学では代々みんなが取るという流れがあり、自分もスキルアップのために取りました。

▷ チアリーディングを始めたきっかけは?

大学の入学式の時、応援団のチアリーダーがパフォーマンスをされていて、かっこいいなと思っていたところ、数日後に勧誘がありました。子供の頃にバトントワリングの経験があり、ダンス系の表現するものをやりたいという気持があったので、先輩たちの勢いに圧倒されて入部しました。

初めは、パフォーマンスを遠くで見ていただけなので、笑顔で踊っているとは全くわかりませんでした。そもそもチアリーディングを見たのも初めてだったので、踊ったり人を持ち上げたりを笑顔でやることを知り入部後に「そんなはずじゃなかった」と思いました。その頃の私は内気で人見知りするような性格だったのです。静かで目立たないタイプでしたから、友人は私がチアリーディングをすると聞いて、とても驚いていました。でも、だからこそハマったのかもしれませんね。チアリーディングを始めてから性格も変わりました。

▷ 中塚さんにとってチアリーディングの魅力とは何でしょうか。

お客様、見ている方々との一体感や、共有し共感できる空間を自分で作ることができるのが魅力なのではないかと思います。自分が発信したことに対し、見ている方々が応えてくれるようなことは、日常では経験できません。子供たちもその魅力に気づくと一気に花開きます。

▷ チアリーディングには競技と応援、二つの面がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

私自身、学生時代は体育会運動部の応援がメインでした。競技会にも出ていましたが、それはレベルアップのためのものというスタンスでした。「きらきらKids」も地域での応援がメインで、競技部門に出る子も通常クラスの子と同じようにイベントなどに出ています。

チアリーディングには、表現するパフォーマンスの部分とスポーツマンとして技術を磨く部分の両面があります。ただ、チアリーディングの魅力はやはり組体操、スタンツだと思うので、競技部門に出る子たちは、それらをたくさんやることでチアリーディングがどんどん好きになっていきます。彼女たちは技術を磨く部分に身を置いているので、自分の体のことや、向上するというところに、より意識が向いているのではないでしょうか。

▷ ご自身が影響を受けた指導者はいらっしゃいましたか?

高校時代、部活の顧問の先生はいらっしゃいましたが、大学にコーチはいませんでしたし、社会人チームも自分たちでやっていました。

ですが、同じチアリーディングのコーチとして非常に結果を出されている方の指導スタイルには影響を受けています。北信越地区でナショナルチームのコーチをされている方の練習を見学させてもらったりもしています。

そこで子供たちを育てる姿を間近に見て、子供でもチームを引っ張って場を作ることができるのだということを学びました。「人間力を育てたい」という言葉を伺い、私がチアで教えたいのはそういうことだったんだ、と気づかされました。

小学生のチームなのですが、自分たちで練習を取り仕切っているのです。私は高校生のチームでそれを目指していたのですが、なかなかうまくいきませんでした。なのに、子供たちがちゃんとやっているのです。初めて見た時は衝撃でした。

ですから今、私が指導するチームでも私が関わらない時間をわざと作るようにし、チームの子たちが自分たちで意見を言い、工夫をして行動する時間を作るようにしています。以前は、子供の可能性に半信半疑で、信じることがなかなかできませんでしたが、その経験以降は子供たちを信じ、必ずできると思って指導を続けています。(中編に続く)

(文:河崎美代子)

中編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/23-2/

後編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/23-3/

◎中塚 泰子さんプロフィール

チアリーディングチームきらきらKids 代表

北信越チアリーディング連盟 理事

日本チアリーディング協会認定Class2 指導員

<経歴>

1981年 金沢市生まれ

2003年 筑波大学第二学群生物資源学類卒

大学在学時にチアリーディングを始め、主に体育会運動部の応援活動を行う。

在学中に指導員資格を取得

就職を機に金沢市へ帰省し、社会人チアリーディングチームを創設

仕事の傍ら北信越地区の講習会指導スタッフや高校チアリーディング部の

外部コーチ等を務め、現在はチアリーディングコーチングを主軸に活動している。

<主な指導歴>

2007年〜 石川県立金沢伏見高等学校チアリーディング部

2010年〜 チアリーディングチームきらきらKids

2011年〜 特定非営利活動法人かなざわ総合スポーツクラブ 

チアリーディング教室 他 教室指導

2020年〜 星稜泉野幼稚園 課外教室

【関連サイト】

チアリーディングチーム きらきらKids