「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、立命館宇治中学校・高等学校バトントワリング部コーチの村木侑子さんです。
12歳からバトントワリングを始め、選手として輝かしい成績をおさめた後は中高生の指導にあたり、数々の賞を獲得しています。また大阪でバトントワリングチームEn-baton(エンバトン)を運営、子どもから大人までの指導を行っています。
「他の選手よりスタートが遅かったからこそわかること、気づくことも多い」と語る村木さんのお話を3回にわたってご紹介します。
(2026年5月 インタビュアー:松場俊夫)
▷ 指導することと自分で考えさせることのバランスはどのように考えていますか?
バランスをとるのは難しいですね。私が部員たちの練習を見る時は指導をした上で、自分で確認させることはよくあります。ミーティングはメンバー間でよくやります。中学生は特に多いと思います。中学・高校の部員はいま40人くらいいますが思春期ですから色々あります。
▷ バトントワリング(以下バトン)の試合に出場できる人数は何人なのですか?
全国大会のチームの規定は4人以上となっており、それ以上であれば出場できます。何人でもいいのですが、人数が多ければ多いほど合わせるのが難しくなります。うちの部員は立命館宇治のバトン部に入りたくて来た子ももちろんいますが、9割以上が立命館宇治でバトンに出会ったという子たちなのでとても大変です。
コンテストには個人種目もあり、それぞれの級があるのですが、その最低限のレベルができたメンバーに大会に向けての「決意書」というものを書かせます。この「決意書」は20 年前からやっており、それぞれがどう頑張るのかを書いてもらいます。「勉強も頑張って補習にかからないようにします」というようなことです。それが提出された段階でチームを組みます。誰かに言われたからやるのではなく、まず自分で決めたからやる、だから最後までがんばろうという形です。ただバトンとの向き合い方は人それぞれですから、決意書を書くか書かないかは本人に任せています。
▷ 中高生は気持ちの浮き沈みが大きいと思うのですが、落ち込んでいる生徒にはどのようなアプローチをしていますか?
私から直接アプローチすることは少ないかもしれません。例えばスランプに陥っている子には技術的なアプローチをもちろんします。でも気持ちが落ち込んでいる子に私が直接接すると、ちょっと重くなってしまうこともあるので、学生コーチに指示をしてアプローチしてもらうことが多いです。学生コーチなら年齢が近い分、寄り添ってあげることができます。また顧問の先生に言ってもらったりすることもあります。第三者が自分のことを褒めていたと聞くと嬉しいものですよね。

▷ 20年前の中高生と今の中高生を比べて、何か変化を感じることはありますか?
貪欲さが少し違うような気がします。もちろん貪欲さのある子もたくさんいますが、ない子は本当にないと思います。でも世の中に情報があふれているせいか、言葉や物の言い方は案外しっかりしていると思うこともあります。ただ情報が多くて知識がある分、逆に大人すぎると言いますか、自分たちの言葉で喋っていないように感じることがあります。アナログでない感じというか、頭でっかちな感じというか。
でもコミュニケーションのスピードは上がりました。昔は演技を録画したビデオをダビングして、と手間がかかりましたが、今はその日撮った動画をすぐに送って共有することが簡単にできるようになりました。これは20年前とは大きな違いだと思います。
▷ 現在の立命館宇治のバトン部はどんな雰囲気のチームですか?
高校は、留学している子や受験のためにチームには入っていないメンバーが6名ほどいるので、10名のチームメンバーとなっています。密にコミュニケーションがとれるため楽しそうにやっています。部員が少ないからこそ頑張らなくちゃという気持ちがあるのだと思います。中学は学年によってカラーが全く異なるので、その年ごとに雰囲気が全然違います。他の学校から見たら立命館宇治の個性というものがあるのだと思いますが、本当に毎年違います。演技に使う曲も何百曲ものストックから私が選んで決めているのですが、メンバーの持っている個性やカラーに合わせて決めるので、同じ曲を一度も使ったことがないです。
そうした学年ごとの違いをどう中和していくかがとても難しいところです。例えば3年生はとてもやる気がある学年だとして、2年生もその調子でやろうと思うと、余計に離れて行ってしまうという現象が起こる場合があります。そこで、3年生も2年生もみんながちゃんと向き合えるように、学生コーチや顧問の先生と一緒に様々な方面からアプローチしています。
▷ 結果以外で大切なこと、結果よりも大切なことがあると思った体験はありますか?
たくさんあります。結果は残らなかったけれど記憶に残るチームだと言ってもらうことが非常に多いです。演技にはその年々の時事ネタを織り込んでいるのですが、特にコロナを取り上げたものはインパクトがあったようです。コロナで様々なものが制限されて、みんな一緒にチームの演技ができなかった、みんな一緒に学校生活が送れなかったという体験をバトンで表現したのです。
その時の高3は中2の時にコロナを経験した学年なのですが、中2の時には全国大会が行われませんでした。選ばれはしたのですが、動画発表という形だけでもちろん集まりもなくて。その学年の子たちに手向ける気持ちがありました。高3の子たちはコロナで大会に出られないという体験をした最後の子たちなので、ここでやらないと多分できないだろうと思ってやりました。
明るいイメージからコロナ禍になりどんどん暗くなっていって、ということをマスクもつけて表現しました。これは誰もが体験したことなので「すごく心に刺さった」と言ってくださる人がたくさんいました。時事ネタ、社会ネタの企画を立てるのは楽しいです。
▷ 部員たち、スタジオの子どもたちに挨拶などの教育的な指導をされているとのことですが、どのようなものですか?
小学生にはまだ響かないところなのですが、中高生には「愛されるチームになろうね」とよく言っています。誰から見ても印象が良く「バトン部頑張ってるね」と思ってもらえるチームであろう、そうでないと応援してもらえないよと。ちゃんと挨拶もできないと「なんだあの学校は。演技だけできたらいいのか」と言われてしまいますから。
▷ 「愛されるチーム」のようなスローガン的なものはずっと掲げているのですか?
はい。もちろんスローガンはその年々によっていろいろ変わってはいます。かなり前のことなのですが、部員の誰かが電車の中で、悪口ではないのですが他校のことを色々言っていたのをその学校の子が耳にしたらしく、クレームが来たのです。 そのことがきっかけになったとも言えます。悪口のつもりではなくても、他の人が聞いたら悪い印象を持つのはよくあることです。ですから大会の時は誰が聞いているかわからないので気を付けるように言っています。他のチームも応援する方たちもみんな頑張ってここに来ているのだから、人のことを下げるのではなく、自分たちが上がらなければと。注目されているからこそ、そうしたことは大切だと思います。
▷ 指導の中で、これだけは譲れないと思うことは何ですか?
苦しくても辛くても「バトンが好き」という気持ちは大切にしてほしいと思います。私自身が好きだから好きと思ってほしいのかもしれませんが、人生には苦しいこと辛いことがたくさんありますから、ほんの少しでも楽しいことのために頑張ってほしいのです。私はバトンの技術だけ上手くなればいいなどとはまったく思っていません。部員たち、子どもたちにはバトンを通して色々なことを学んでほしいのです。(後編に続く)
(文:河崎美代子)
村木侑子さんプロフィール
☆受賞歴
・12歳からバトンを始め、高校時、バトントワーリング全国大会 金賞受賞。
・大学では2004、2005年に同全国大会でグランプリ・内閣総理大臣杯獲得。
・IBTF第1回インターナショナルカップ(アメリカ)ではチームの部 優勝。
☆En-baton 受賞歴
・2023年度ジャパンカップ OPEN 第5位
・2024年度全国大会 U-12 優秀賞&ノードロップ賞
・2025年度全日本選手権 ソロトワールU-9 出場、及び エンタメ甲子園 優勝
☆資格
・日本バトン協会準公認指導員
・日本バトン協会6種目公認審査員
☆指導歴
・2006年度より立命館宇治中学・高校を指導し、18年連続全国大会に出場。
及び中学金賞受賞16回、高校金賞受賞回数12回(2020年度は動画開催の為、優秀賞のみ)
・2008年より2年間、立命館大学を指導。
2008年第4回IBTFインターナショナルカップ(アイルランド)チームの部第3位
2009年第5回IBTFインターナショナルカップ(オーストラリア)チームの部第3位
・その他、バトン講習会、チャコットダンス発表会、体操女子ゆか競技の振り付け指導
En-batonについて
2017年7月En-baton設立、2019年4月バトンクラス開講
バトンが回ること=円、人とのつながり=縁
バトンを回すことでご縁が繋がるように想いを込めてEn-batonとつけました。
バトントワリングの技術向上を目指していく中で、礼儀や精神力を身に付け、
自己表現力の向上、育成活動を目的としています。また、生涯スポーツとして取り組みを目指しています。










