「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、立命館宇治中学校・高等学校バトントワリング部コーチの村木侑子さんです。
12歳からバトントワリングを始め、選手として輝かしい成績をおさめた後は中高生の指導にあたり、数々の賞を獲得しています。また大阪でバトントワリングチームEn-baton(エンバトン)を運営、子どもから大人までの指導を行っています。
「他の選手よりスタートが遅かったからこそわかること、気づくことも多い」と語る村木さんのお話を3回にわたってご紹介します。
(2026年5月 インタビュアー:松場俊夫)
▷ 現在、どのような活動をされていますか?
現在の活動としては、立命館宇治中学校・高等学校のバトントワリング部で約20年コーチとして指導をしています。また大阪の阿倍野でEn-baton(エンバトン)というチームを運営し、子どもたちから社会人、中高年の方々にバトントワリング(以下バトン)を指導させていただいております。過去には、体操の床の選手など他スポーツの方々の指導や、ダンスの指導もさせていただいておりました。
▷ 「エンバトン」というチーム名の由来について教えてください。
他のバトンスタジオから2017年に独立した時、どんな名前をつけようかと色々考えましたが、自分の名前をつけるのはなんとなく嫌だったのです。後々チームが続いていく時に、自分の名前よりもチームとしてちゃんと残っていってほしいと思ったこともあって。そこでバトンの回る「円」とご縁の「縁」がつながって、みんながつながればいいなという思いでエンバトンと名付けました。
現在は大阪の阿倍野地区を中心に、阿倍野文化祭など地域のお祭りやイベントに出させていただいています。コンテストや大会にも出場しており、最近では全国大会や全日本選手権でも結果を出しています。また、私の教え子たちが京都で「TOWAバトン」という教室をやっており、そちらも分校のような感じで、私は直接関わってはいませんが、私の持っているノウハウを指導しています。
▷ 村木さんは競技者として日本一になられ、数々の賞を獲得なさいましたね。
内閣総理大臣杯をはじめとして数々の賞を取りましたが、それはチームの成績で、個人ではやはり太刀打ちができませんでした。なのでチームが好きというのもありましたが、みんなの力を合わせれば大きなものが得られるチームという種目が私の中の主軸、ベースになっていました。
私がバトンを始めたのは12歳で、これは他の人に比べたらめちゃくちゃ遅いのです。でもそこからバトンにのめり込み、バトンの推薦で立命館大学に進み、稲垣正司監督に指導していただきました。実は立命館に入ったのは、稲垣監督の作る作品がどうしても踊りたいという一心だったのです。私が中学の頃に立命館大学バトントワリング部ができたのですが、もうその演技を見た瞬間に「ここにしか入りたくない!」と思い、ひたすらがんばって入ったという形です。
そんな思いで入った大学では、自分は上手ではないのでどこで強みを見つけるかということを大事にしていました。例えば、カウントを取るとか、表現力を高めるとか、見せ方を意識するといったことです。技では3歳、4歳からやっている全日本レベルの子たちにはどうしても負けてしまうので、一緒にやっていくのはなかなか大変でした。
大学を卒業してからは、稲垣監督が作ったバトンスタジオでずっと指導していたのですが、そこのスタッフは日本で名が知れている全日本クラスのメンバーばかりでした。一方の私は全国で優勝したりインターナショナルカップで優勝はしているものの名前がまったく知られていない選手だったので、他のメンバーより秀でたもの、何か強みを持たなければと思い、もう一度ダンスを一から勉強し直しました。週5日ぐらいレッスンに行っていた時期もありましたし、ニューヨークにも勉強に行きました。自分の強みを持つことと同時に、それを少しでも生徒たちに還元できるようにと思っていました。

▷ 指導者になろうと思ったきっかけは何でしたか?
バトンが好きだから。それが一番大きいと思います。ずっとバトンを続けてきて、選手の時も先生になりたいとずっと思っていました。でも先生になるためには技ができなければいけませんし、大会でしなければならないこともあるので、そうしたことに向かってどうすればいいか、いつも考えながらやってきました。
指導者になってから紆余曲折はありましたが、こういう声かけをしなければいけないかなとか、この年齢層ならこうかなとかいろいろ試行錯誤しながら20年やってきて、いろいろ感じていることはあります。
▷ 指導する中で指導のスタイルが変わったことはありましたか?
多少あるかもしれないですね。昔はウワッと言ってさあ来いというような感じも正直ありましたが、そこまでやらなくなったと思います。それはやはり時代の流れですね。コンプライアンスなどいろいろある中で、指導者としてもやはりステップアップしていかなければいけないという思いもありました。
▷ 他の競技から学べたことは何ですか?
それはたくさんあると思います。例えばバレエ。もちろんバトンはバレエや体操といった様々なものが複合されているものなのですが、バレエの体の使い方や新体操の手具の使い方には学ぶことがありました。最近はInstagramでも体の使い方などの情報が流れてきますよね。仙骨が大切だとか体重移動が大事だとか。そうしたところからも情報を得ています。
▷ これまでの指導の中で嬉しかったエピソード、辛かったエピソードを教えていただけますか?
嬉しかったことはいろいろありすぎるのですが、やはり単純に、できなかった子ができるようになるのは嬉しかったですね。それは私が12歳から始めたことも大きく影響していると思います。私の一年上に非常に有名な選手がいらして、その人は「他の人ができない理由がわからない」とおっしゃっていましたが、私はできない子の気持ちがわかるからこそ喜びを感じるのだと思います。
辛かったのは、さらに上に行くことができない時ですね。高校の全国大会ではずっと銀賞で、そこから金賞になかなかなれない時期がありました。金賞になった時はもちろん嬉しかったですが、そこから先の戦いの方が苦しかったかもしれません。勝てば勝ったで「金賞はもう当たり前」になると、来年も必ずとるというスタンスでいなければいけない。金賞を取ればだんだん上位には行くわけで最低10位以内には入るのですが、最高位は中学が2位、高校が3位。あと少しのところでそこから上がれない。あとちょっとだったのに惜しかったねという状態は苦しいですね。
▷ そこを超えるには何が必要なのでしょうか。
自分のポテンシャル、コーチングのあり方、コーチとしての力量もそうですが、メンバーの盛り上がり方も必要だと思います。技だけではなく、みんなが一丸になって「やるぞ」という気持ちにならないとダメなのかなというのは正直あります。やはりチーム力は大事だと思います。
▷ チームを作る時にどのようなことを意識してチーム作りをされていますか?
その年代によって多少違う部分もあると思うのですが、中高生で言えば、学校のクラブのチームなので、まず学校生活をちゃんとすることです。「学校生活がちゃんとできていないのにクラブじゃないよね」というスタンスですから。 勉強ができていないなら「はい、来なくていいです」というスタンスです。
バトンというのは、演技中にハプニングが起こった時にすぐリカバリーをしなければならない競技です。例えば、アメフトや野球のようなスポーツの場合、エラーがあっても試合時間が長いのでどこかで取り返せるかもしれない。ですが、芸術スポーツに関しては一回ミスったらそれでおしまいなので、たった何分しかない中でパパパパパと瞬時に考えなければいけない。そうした能力が必要なスポーツだと思うので、勉強だけできればいいとは思いませんが、勉強ができないとパパパパパっと考える力がつかないと思っています。
それから、チームとしてのコミュニケーションも大切にしています。相手を尊敬しながらチームの演技をしてほしいといつも思います。例えば、私や先輩だけでなく、後輩から何か指摘された時も拒絶するのではなくて、まず受け入れること。違うと言われたことをまず「わかりました」と素直に受け入れる。その上でどうすればいいかを考える心を持つことが大切だと思っています。(中編に続く)
(文:河崎美代子)
村木侑子さんプロフィール
☆受賞歴
・12歳からバトンを始め、高校時、バトントワーリング全国大会 金賞受賞。
・大学では2004、2005年に同全国大会でグランプリ・内閣総理大臣杯獲得。
・IBTF第1回インターナショナルカップ(アメリカ)ではチームの部 優勝。
☆En-baton 受賞歴
・2023年度ジャパンカップ OPEN 第5位
・2024年度全国大会 U-12 優秀賞&ノードロップ賞
・2025年度全日本選手権 ソロトワールU-9 出場、及び エンタメ甲子園 優勝
☆資格
・日本バトン協会準公認指導員
・日本バトン協会6種目公認審査員
☆指導歴
・2006年度より立命館宇治中学・高校を指導し、18年連続全国大会に出場。
及び中学金賞受賞16回、高校金賞受賞回数12回(2020年度は動画開催の為、優秀賞のみ)
・2008年より2年間、立命館大学を指導。
2008年第4回IBTFインターナショナルカップ(アイルランド)チームの部第3位
2009年第5回IBTFインターナショナルカップ(オーストラリア)チームの部第3位
・その他、バトン講習会、チャコットダンス発表会、体操女子ゆか競技の振り付け指導
En-batonについて
2017年7月En-baton設立、2019年4月バトンクラス開講
バトンが回ること=円、人とのつながり=縁
バトンを回すことでご縁が繋がるように想いを込めてEn-batonとつけました。
バトントワリングの技術向上を目指していく中で、礼儀や精神力を身に付け、
自己表現力の向上、育成活動を目的としています。また、生涯スポーツとして取り組みを目指しています。










