リレーインタビュー第68回 石水克友さん(中編)

04.01

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、ナショナルデモンストレーターの石水克友さんです。

 石水さんは岐阜県のスキー場近くで生まれ育ち、スキーに明け暮れた少年時代を経て、大学卒業後、技術選手権大会に出場したことをきっかけにインストラクターとして歩み始めました。現在も年間300日以上スキーを履いて過ごすことがあるという、根っからのスキーヤーです。2024〜2025年度全日本スキー連盟のナショナルデモンストレーターに認定され、国内外で多くの生徒さんの指導を行なっています。「スキー以外の部分を輝かせるためにスキーをしているのかもしれない」と語る石水さんのお話を3回にわたってご紹介します。

(2026年2月 インタビュアー:松場俊夫)

前編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/68-1/

▷ スキーを通して人間的な成長を感じるのはどんな時ですか?

私のレッスンはもともと、いきなり上手くなりましょうというのではなく、人間的な器、技術的な器といった「受け皿」をしっかり作り、そこにその人の好きな材料を入れていくというものでした。スキーはバランスのスポーツなので、いかにポジショニングを保つかが大事です。それをしっかり作り上げ、その中に自分がやりたい滑りのスパイスを詰め込んで一つの料理にしましょう、その日のうちに一応形はできるけれど、好きな形をつくるにはこれが必要、というやり方なので、結果が現れるまでに時間がかかることが多いのです。ですから、コツコツ型のお客様は継続的に来てくれるのですが、成功体験を求めるお客様は離れがちです。

でも先日、全日本マスターズスキー技術選手権大会があり、その合宿で指導したのですが、その時はいまお話しした根幹の治療をするようなレッスンではなく、明日明後日の大会で点数を出すための水際対策のようなレッスンをしました。お客様はすごく喜んでくれました。ビジネスというよりインストラクターとしてレベルアップするためには使い分けが必要です。根幹的な技術指導でベースを作り独り立ちできるように育てようというやり方と、今日指導して今日上手くなるという指導のやり方をうまく使い分けすることでビジネスに繋がるのではないかと思います。

やはり、初めに「どんな滑りがしたいか」というヒヤリングをすることが必要ですね。レッスンに来るお客様の多くがまわりに気を遣って「石水さんのような滑りがしたい」とおっしゃるのですが、そうではなく「もっと体を倒したい」といった細かいリクエストをしてもらう。そうしたリクエストに向き合えるようになったら面白くなってきました。グループレッスンのテーマ自体もお客様主導で出してもらうことがあります。

▷ 「技術的な器」を広げるために意識していることはありますか?

InstagramとYouTubeで「みなさんはどんなことが悩みですか?」というオンラインアカデミーをやっています。ヒヤリング的なものですね。お客様も色々で、頭の中が整うことで気持ちよくなる方と、滑りが上手くなることで気持ちよくなる方がいます。理数系な脳の人は、頭の中で組み立てが整うと滑りや板の動きの変化を認識することができるのです。お客様のタイプをしっかり理解した上で指導する面白さを最近感じています。

▷ お客様との信頼関係を築くために心がけていることは何ですか?

レッスンを継続してくれる方を対象に会員制のチームを作っています。その方たちには先生と生徒以上の関係を持ってもらうために、懇親会やセミナーを催して常に技術の提供をするようにしています。

毎冬スキー場にいらっしゃる常連さんの場合は、距離を縮めるために一日一本は自分の後ろを滑ってもらうようにしています。スキーはタイミングとリズムが大事なので、実際に滑りながら滑走速度を合わせてもらいます。最近は、試合に出るような速い滑り、中速、ゆっくりめと「松竹梅」でやったりと、お客様からのリクエストを引き出すような努力をしています。

スキーとスノーボードはレッスン時間が2時間だとすると、滑走する時間は多分30分もなく、ほとんどの時間をリフト、説明、待ちで使っています。ですからその時間をどう使うかが大事です。例えば、ペアリフトでは1対1で5分から10分話せます。色々な人と乗ることで、他のスポーツよりもコミュニケーションが取れるのではないかと思います。

▷ スキーというスポーツは自然とどのように向き合うかが大事だと思います。どのようにお考えですか?

スキーは自然があって初めて成り立つスポーツなので、環境問題には真摯に協力しています。地形や気温、雪の量や質、斜面の角度、視界といったものに、スキーはさまざまな影響を受けます。山には真っ平な場所はないので、ターンするときの物理的な感覚もあります。雪質も、気温が高いと氷に近くなるし、零下だと柔らかくなります。

ですから私はレッスンにいらっしゃるお客様がお子さんをスキー場につれて行く時は「天気が良くて暖かい時にしてください」と言うようにしています。晴れていて斜面がなだらかで人も少なめで暖かい時に、と。お子さんたちの印象を良くするための普及活動の一環でもあります。

山から見る景色は本当に気持ちがいいです。日本でも海外でも、どこのスキー場も景色が悪いところなど一つもありません。雪山では心のマッサージのようなリラックスを感じます。もしガスが出ていて視界が悪くても、次に行った時に天気が良ければ「あ、こんな景色だったんだ」という発見があります。冷たい空気も好きですね。刺すようなマイナス25度、風速30mぐらいの中で滑った時は苦しかったですが、それもスキーの醍醐味です。スポーツにはフィールドの芝の匂いや防具の匂いといったものがありますよね。それと同じです。

私は整地をカービングでうまくみえるように滑る指導をしていますが、今の目標は雪山を自由に滑るフリーランです。フリーランを目標にしている方にはぜひレッスンにいらしてほしいです。新雪の魅力というものがあると思います。ただカービングするのであれば、サイドカーブが強い短めのスキーで滑ればよいのですが、フリーランとなると圧雪も非圧雪も、地形を利用する方がいい。そんな、ちょっと変わった遊び方を教えられる先生になれればいいなと思っています。

アスリート系のスポーツでも良いのですが、「遊び」だから楽しいという気持ちでスポーツをやってもらうのも良いのではないでしょうか。チームスポーツですと、まず人を集めて場所を準備して、時間を測ってやらなければなりませんが、スキーの場合、ゲレンデをただ降りるだけでもスキーです。「遊び」に近いスポーツとして、スキーをもっと面白く広げていけたらと思っています。

▷ 「遊び」であるスキーは石水さんの人生にどんな影響を与えてくれましたか?

普通の人は「スキーは人生の中心です」とか言うのでしょうけど、私は逆で、スキー以外の部分をキラキラさせるためにスキーをやっている感じです。一生懸命スキーをやっているからその後の温泉が楽しい。そんな、スキー以外のものをキラキラさせてくれるような感覚です。

私は神社が好きで、宮崎の高千穂神社周辺に行きたいがために九州の仕事を入れたりしています。神社を巡ってからスキー場に行く。この自由度はたまりませんね。何のためにスキーをやるのかといえば、脇道にそれるためにやっているようなものです。主戦場はキラキラしていなくても良いのです。幹は光っていないけれど枝がキラキラと光っているクリスマスツリーのような、そんな人生です。(後編に続く)

(文:河崎美代子)

◎石水克友さんプロフィール

1983年2月9日生まれ 

岐阜県高山市出身 

2024~2025年度ナショナルデモンストレーター

朴の木平スキークラブ所属。

スキー場まで400mという好立地に生まれ、

ほおのき平スキー場で3歳からスキーを始める。

小学校中学校の時期は、毎日ナイタートレーニングを欠かさず、

高校では同級生と切磋琢磨の日々を送る。

近畿大学へ進学し、在学中より技術選にチャレンジを始め今に至る。

技術選に出場する傍ら、夏はピスラボ、

冬は朴ノ木平でスキースクールを運営し

年間300日以上スキーを履き過ごす。

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