リレーインタビュー第68回 石水克友さん(後編)

04.16

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、ナショナルデモンストレーターの石水克友さんです。

 石水さんは岐阜県のスキー場近くで生まれ育ち、スキーに明け暮れた少年時代を経て、大学卒業後、技術選手権大会に出場したことをきっかけにインストラクターとして歩み始めました。現在も年間300日以上スキーを履いて過ごすことがあるという、根っからのスキーヤーです。2024〜2025年度全日本スキー連盟のナショナルデモンストレーターに認定され、国内外で多くの生徒さんの指導を行なっています。「スキー以外の部分を輝かせるためにスキーをしているのかもしれない」と語る石水さんのお話を3回にわたってご紹介します。

(2026年2月 インタビュアー:松場俊夫)

前編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/68-1/

中編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/68-2/

▷ 指導をする中で、成長する人としない人の違いはあると思いますか?

あると思います。ただ、従順だから伸びるとか、自分自身のことを知っているから伸びるというようなことはないと思います。私が言ったことを実践してもらう時も大事なところがぬけることが多々ありますが、多分、成長が速い人は頭の中でイメージできる人なのだと思います。単なるイメージというよりも、一手先をイメージできる人です。

私は、アドバイスはできる限りシンプルにしたい、滑るときにアドバイスしたいことが5つあれば、2つぐらいできればいいと思っています。スキーは足が板に固定されているので、上半身の補助的動作をアドバイスすることが多く、お客様もすぐに言われたようにすることができます。でも伸びる人は一手先、もっと伸びる人は三手、四手先まで一つのアドバイスから自分で引き出すことができます。ただ、過度に先を狙ってしまう人はなかなか伸びません。ちょうどいいところがあるようで、わたし的には一手先ぐらいがちょうどいいと思っています。

スキーは同じ状況で滑れることはなく、その時その時で終わりです。斜面、斜度、気温、風速、滑走速度、板の状況、筋力量も毎回違います。100m走の人は同じ環境で何度もできると思いますが、スキーは毎回違うので、いかに自然と自分の状況を把握して滑るかが大事なスポーツです。ですから、その時の斜度にあったアドバイスが他の斜面でも有効というわけではありません。一手先を行く人はその違いを解釈できるので、次の斜面でもうまく滑ることができるのです。

▷ 指導をする上でこれだけは譲れないということはありますか?

物理を大事にしているので、物理に反することは言わないように気をつけています。教科書のようなものには色々な滑り方が書かれていますが、物理に置き換えられないことは説明しません。ただ、技術選手権のジャッジの視点は物理的に違うところもあるので、矛盾が生じるような言い方をしないようにしています。「先生は以前こう言ってましたよね」というようなことがないように。先生がぶれたら生徒は何を信じればいいかわからなくなります。

▷ 石水さんご自身の「師匠」はどんな方でしたか?

私をずっと指導してくれたのは父親です。父親のほうが私よりもこだわりが強かったですね。毎日ナイターを滑るのですが、2年間ぐらい同じことをずっとやる、トレーニングも4ヶ月間同じことをずっとやるという感じでした。その影響はあるのではないかと思います。

今、レッスン対象者の幅が広がってきています。これまでは大会や、クラウンプライズ、テクニカルプライズといったスキルの資格を目指す、滑りが上手で速い方たちが主だったのですが、最近はシニアの方たちが増えています。生涯スポーツとしてやりたいのでもっとうまくなりたい、という方たちで、目標がさまざまに枝分かれしています。板が速く走る乗り方と膝が痛くならない乗り方とではまったく違うので、お客様のタイプに応じてアドバイスしています。

また、インストラクターに対して研修をしてほしいという依頼が増えています。外国人のインストラクターが対象です。香港や台湾の人向けのスキースクールを経営している方からの依頼で研修をするのですが、彼らにはとにかく私の滑りを自分の目で見てもらい、その人たちの生徒さんからかっこいいと思われるような滑り方を教えるようにしています。それとインストラクションですね。「コースのここを使うと危険だから立ち位置はこのように」とか「こういうふうにすると小回りがきくようになるよ」といった教え方です。いまはそういったビジネスが増えていて、中国にもレッスンに行っていますが、そういった形で裾野拡大に貢献したいと思っています。

▷ スキーとスノーボード、両方の選択肢がある子どもたちにはどのように対応されていますか?

子どもたちにスキーをさせたいから興味を持たせるようにアプローチするというよりも、大人にアプローチして子供をスキーに連れてきてもらいスキーをしてもらうのがメインです。最近では雪国の子どもたちが習い事やゲームの方に時間を取られてスキーをしなくなっているので、新しいことを色々考えています。例えば、習い事のようなスキーがあってもいいのではないかと思います。

また都会の方たち向けに、レンタルも宿泊もレッスンも込みのツアーをやりたいと思っているのですが、そのためにはインストラクターを増やさなければなりませんし、スポンサーも必要です。スキー関係の企業や店舗、また自然関係の企業にとっても良いアプローチになると思います。有料のスキーイベントより、無料で指導しますという方がスポンサーが集まると思っています。

▷ 今後のビジョンについて教えてください。

私の本道のビジョンは、雪山を自由に駆け回る「フリーラン」ができるインストラクターとして名前が知られていくことです。現在は技術選手権のプレーヤーやデモンストレーターのように技術にウェイトが置かれている存在なので、雪山コーディネートも含めてフリーランを目指したいです。

国内にフリーランのインストラクターはあまりいないと思います。新雪を滑る人たちは山に入るか、サイドカントリー、リフトで行ける場所の新雪を滑っていると思いますが、すべてを一緒にやっている人は多分いないのではないでしょうか。

グローバルな面では、もう少し世界的に有名になって、海外のインストラクターを日本に集めて技術選手権のアジア大会のような国際的なイベントがやりたいです。現在、韓国には国際技術選手権というものがありますが、そういう堅い感じよりもう少し滞在者にやさしくするために、インストラクタービザを出して滞在費と旅費ぐらいは日本で稼げるように準備します。そうすればインバウンドのインストラクター不足も補えます。いまは中国、香港、台湾、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、ネパールからもお客様が来ています。

ただ、スキー場の未来は日本人に愛されるものにしていかないと、インバウンドが落ち込んだときに大打撃を受けるのではないかと心配しています。日本の雪はジャパンスノーといって、世界有数の雪質として世界的に有名です。それは日本が島国だからで、韓国や中国にも雪山はあるものの人工雪がほとんどです。

▷ 全国の指導者の皆さんにメッセージをお願いします。

指導する対象の本質をしっかり見抜いた上で指導することが大切だと思います。世界を目指すアスリートにはベースから順番に順序立ててストイックにコーチングする必要がありますし、趣味としてスポーツに向かっている人に対しては、体の安全、怪我しにくいやり方と並行して技術向上してもらうようインストラクションをする必要があります。年齢層が上がればなおさら安全面の配慮が必要です。(了)

(文:河崎美代子)

◎石水克友さんプロフィール

1983年2月9日生まれ 

岐阜県高山市出身 

2024~2025年度ナショナルデモンストレーター

朴の木平スキークラブ所属。

スキー場まで400mという好立地に生まれ、

ほおのき平スキー場で3歳からスキーを始める。

小学校中学校の時期は、毎日ナイタートレーニングを欠かさず、

高校では同級生と切磋琢磨の日々を送る。

近畿大学へ進学し、在学中より技術選にチャレンジを始め今に至る。

技術選に出場する傍ら、夏はピスラボ、

冬は朴ノ木平でスキースクールを運営し

年間300日以上スキーを履き過ごす。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る