リレーインタビュー第71回 山下華子さん(前編)

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回は、三重県伊賀市で地域密着型のストリートダンススタジオを主催し子どもから大人までの指導を行うダンサー・指導者の山下華子さんのお話を3回にわたってご紹介します。

(2026年7月 インタビュアー:松場俊夫)

▷ 現在の活動について教えていただけますか?

スタジオとしては、伊賀市の地元企業のイベントや地域のお祭りなどでのパフォーマンス出演と、近隣地域である奈良県の方面からも生徒さんが来てくださっているご縁で依頼を受ける様々なイベントに関わらせていただいています。主に地域の活性化として、たくさんの人に足を運んでもらいたいという意図で実施されているイベントです。依頼を受けたイベントの大小に関係なく、子どもから大人まで楽しんでいただけるパフォーマンスを指導し、作品を披露させていただいています。また年に一回、地元の大ホールで自主公演を開催しております。今年、自主公演20回目を迎えるにあたり、現在メンバー一同日々レッスンと週末には広い施設でのリハーサルに全力で取り組んでおります。

▷ 「SOUL FLOWER」というスタジオ名にはどのような思いが込められているのですか?

直訳すると、「魂・精神の花」となるのですが、一人一人それぞれが自分の大好きなことを身体で表現し、魂の花を咲かせてほしいという思いが込められています。ストリートダンスの起源が1960年代アメリカの黒人文化の魂・精神である”SOUL”、そして私の名前の一文字が”華”という要素も大切なピースとして反映させたいという思いもありました。

▷ 2005年から現在まで地域密着型で続けてこられたのは素晴らしいことだと思います。どのようにして地元との信頼を築かれてこられたのでしょうか。

まずここでスタジオをやることになったいきさつからお話しすると、私の出身は奈良県で、ここ伊賀市は夫の母方の地元になります。現在ダンススタジオのオーナーであり、ダンス講師である夫とはスポーツの専門学校時代に大阪のスポーツクラブで共にトレーナーとして出会いました。ダンスを愛するトレーナー仲間と同じダンススタジオに通う中で、ストリートダンスに目覚めた私は本格的にダンスを学んでいきました。当時私は大阪、神戸のスポーツクラブでフリーのエアロビクスインストラクターとしても活動していましたが、結婚後はすべて辞めて夫が跡を継いだお父様の居酒屋を手伝いながら、地元のスポーツクラブでまずエアロビクスの指導からスタートしました。その後ストリートダンスのクラスに着手することができるようになりました。

そんな中、同じ府中地区のお父さんから子どもたちにダンスを教えてほしいという声がかかりました。元々子どもに教えたこともなく、苦手意識もあり躊躇したのですが「府中子どもダンスサークル」の講師をお引き受けしました。もう23年以上前のことになりますね。当時、伊賀市内で私たちよりも前にJAZZダンススタジオやヒップホップ系の教室などをされている先人の先生方がいらっしゃったのですが、様々なジャンルを展開して教えているようなストリートダンススタジオはまだありませんでした。府中子どもダンスサークルは子どもたちの間で大好評となり、たくさんの子どもたちが集まってくれました。同時にスポーツクラブのストリートダンスの人気も上がり、キャンセル待ちが出るくらいの勢いで、週末にはレンタルスタジオでも指導を始めました。

周りに「もっとダンスがしたい」という人たちが増えてきて、市民文化祭のステージにも出演し、私たち夫婦の活動は自然に周知されていきました。ダンスブームはどんどん勢いが増していき、生徒さんたちも増えていく状況に背中を押され、居酒屋を閉めて改装し、21年前に「SOUL FLOWERダンススタジオ」としてスタートしました。とても狭いスペースではありましたが、熱血指導によりメンバーもどんどん増えていきました。そこで頭を悩ませたのは、お月謝の金額でした。大阪などの都会での相場がここ伊賀ではかなりの壁がありました。地域性を踏まえ、週4回で3000円の月謝でスタートしました。通常ではかなりの安価ではありましたが、思い切り熱量を込めてやってまいりました。メンバーたちにも保護者の方にも地域の方にもダンスに対する熱量や思いが伝わっていったと感じています。

オープンした1年目から毎年ホールでのスタジオ自主公演を開催しており、今年で20回目を迎えます。1回目の開催当初はチケット代を取り、観客を動員するということは、保護者さんたちにとっては初めてのことでハードルが高く、理解してもらうために集まってもらい何度も話して伝えていきました。ただの発表会として開催する認識ではなく、観に来てくださる方たちの心を動かすパフォーマンスをしたい。都心に出て行かなくても、地元でストリートダンスに触れることができて、老若男女が楽しめるような、音響にもこだわったエンターテイメントなステージを届けたい。その為にはどれだけの費用がかかるかなども説明して、何とか理解を得られましたが、半信半疑だったと思います。でも実際のステージを見て、今まで見たこともないステージングと子どもたちが頑張っている姿、輝いている姿を見て一気に信頼と理解がすすみました。

最初の壁はクリアしましたが、もともとチケットを買って地元のホールへ足を運ぶという文化が根付いていない地域です。それでも毎年継続していく中で、満席に近い動員数となり、年を追うごとに成長していくメンバーたちの姿を見て家族だけではなく、地域の方々も応援してくださるようになりました。もちろん良いことばかりではなくいろんなことがありましたし、今も起こることがあります。その度に私は保護者さんに対しても、メンバー本人に対しても、ストレートに思いを伝えます。子どもたちの成長と実際の本番でのパフォーマンスやステージングのインパクトも相まって、信頼関係が築けてきたように思います。ホールで開催することを発表会ではなく「公演」と呼んでいるのも、決して自己満足にとどまらずに、たくさんの人たちに喜んでもらえるパフォーマンス、エンターテインメント性豊かな演出構成をしているからなのです。

今では「SOUL FLOWER」という名前はダンスをしていない方々にも知られるようになってきました。地元の様々なお祭りやケーブルテレビ、地元の企業さんなどのイベント出演依頼、小中学校からの指導依頼やパフォーマンス依頼の関わりなどもあり、10年目を過ぎたあたりから更にまわりからのスタジオに対する目が変わってきたように思います。

▷ ストリートダンスというと不良っぽいものと言われることはまだありますか?

今や学校教育の中でもダンスが取り入れられ、認知度も上がってはいますが、なにぶん地方の田舎ですので、年配の方や学校関係者の中にはあまり良いイメージを持たれていないことを耳にすることは残念ながらまだあります。ストリートダンスと言われる通り、昔はもともと街中で踊っている人たちが多く、ゴミや騒音などでマナーを守らず良いイメージを持たれていないところがありました。ですが私も夫も、ストリートダンスを子どもから大人まで楽しんでもらえる文化として地域に根付かせたい想いが根底にあり、最初の立ち上げから子どもたちには規律や礼儀を徹底してきました。どこに行っても、気持ちの良い団体でありたい。周りの方々からも快く迎え入れてもらえ、信頼されるような団体でありたいと思ってやってきましたので。おかげさまで、パフォーマンスさせていただいた先の関係者や見に来られた方は、「すばらしい」「気持ちいい団体さんやね」とおっしゃってくださり、毎年出演依頼をしてくださいます。パフォーマンスのクオリティだけでなくマナーやコミュニケーションについても変わらず徹底してきたことが20年続けてこられた理由かもしれません。

▷ 今までやってこられて一番嬉しかったことは何ですか?

一番として一つには絞れず、毎回嬉しさと幸せを感じています。舞台上の子どもたちを袖や客席で見ていると、とてもいい表情で、全身全霊で表現している姿や感情があふれて涙を流す光景は本当にキラキラしていて。

私は指導だけではなくメンバーと共に舞台に立っているのですが、みんなの輝いている姿がエネルギーになってつながっているのを感じます。特に大人数での群舞は50人から70人ほどの数の人間が一体になるわけですから、それはもう圧巻です。様々なスタイルの作品を全力で楽しみ、進化成長を毎回感じられる喜びはとても大きいです。

普通、お稽古事は3年ほどで辞める子が多いようですが、うちはほとんど5年が最低ラインで10年前後習ってくれている子が非常に多く、中には15年から20年のメンバーもいます。そういう先輩たちがSOUL FLOWERの歴史を創り歩んできてくれたおかげで、年下の子達はその背中を見て成長してくれることもとても嬉しいことです。

▷ 指導する上で年齢によって変えていることと変えていないことはありますか?

年齢によって理解力や筋力が違いますから、それぞれの年齢やレベルに合わせて指導内容も変わってきます。幼児さんたちには先ず踊ることが楽しい、身体を動かすことが楽しいと思ってもらえるような指導を心がけています。「ダンスが好き」という思いを全力で出していこうとする情熱は年齢に関係なく指導していることです。技術面では、表面的な形や見た目だけに捉われず身体の内側に目を向けて、しなやかで力みのない連動した身体の使い方で踊れるように、高校時代からお世話になっている恩師の先生から学んだ呼吸法やエクササイズを私のすべてのクラスで取り入れています。(中編に続く)

(文:河崎美代子)

 

山下華子さんプロフィール

SOUL FLOWER ダンススタジオ主宰
4ELEMENTS 主宰

個人の活動として5才〜大人まで様々なクラスのダンス指導を行なっている。
主な専門ジャンルはJAZZ、LOCK、WAACK、身体のメンテナンスクラス。
奈良県出身 三重県在住

2005年より伊賀市佐那具町にて地域密着型のストリートダンススタジオを開校、夫婦で代表として活動を始める。
2006年より伊賀市内の会館ホールにてスタジオ自主公演を毎年開催。コロナ禍により公演を一年自粛したが、今年で20回目のダンス公演を迎える。

過去には崇広中学校、青山中学校、緑ヶ丘中学校、柘植中学校、阿山中学校、名張高校、久米小学校、府中小学校、壬生野小学校、ふれあい教室にて学校行事(ダンスパフォーマンスや講演、体育祭のダンス振付指導等)の依頼を受け、出演、指導の経歴を持つ。

2018年には、笑いと感動のあるエンターテインメントは世界を救うをモットーに、舞台芸術に特化したエンターテインメント公演を企画主催する4ELEMENTSを立ち上げ、公演を開催している。

スタジオレッスン以外に、伊賀市文化都市協会主催の子ども表現力育成事業となる、子どもエンターテイメントミュージカルの総合プロデュース、指導者も担当している。

★4ELEMENTSとして開催した公演
2018年 伊賀市文化会館ホールにて「紡ぐ〜TSUMUGU」
2022年 伊賀市文化会館ホールにて「雑ッ!ENTERTAINMENT」
2023年 伊賀市青山ホールにてオリジナルミュージカルエンターテインメント「ワンダードリーム学園」(伊賀市、伊賀市教育委員会後援)
2024年 伊賀市青山ホールにてオリジナルミュージカルエンターテインメント「ワンダードリーム学園NEO」(伊賀市文化都市協会共催、伊賀市、名張市教育委員会後援)

★個人でのダンス経歴
2011年 Legend TOKYO「KAORI Alive number レクイエム」出演 審査員賞受賞
2012年 世界大会VIBE Dance competition nol.17「KAORI Alive number レクイエム」出演 3位入賞
2013年 世界大会VIBE Dance competition nol.18「Memorable Moment number」出演 3位入賞
2014年 Legend TOKYO chapter4「Memorable Moment No War」出演 最優秀作品賞、審査員賞W受賞

【関連サイト】
SOUL FLOWERダンススタジオ