スポーツ指導者が学びあえる場

コーチ道10周年イベント 開催のご報告

NPO法人コーチ道はおかげさまで創立10周年を迎えました。感謝の気持ちを込めて開催した10周年イベントには、50名の方々にご来場いただきました。

イベントのテーマは「NEXUS(つながり)」。代表 松場俊夫の「スポーツにとどまらず、つながりを作ってほしい」との言葉で始まり、アイスブレイクで会場には一気に和んだ空気があふれました。

歓談タイムには、久々の再会を喜ぶ方々、初対面で名刺交換する方々の姿が見られ、それぞれに「つながり」を実感していただけたことと思います。

続いて、ヤフー株式会社 取締役常務執行役員 本間浩輔さんによる講演が行われました。

講演「ヤフーの1on1」

ヤフー株式会社で人事改革を実現した本間さんのお話はまず、1on1の実例をロールプレイで披露していただくところから始まりました。

本間さんによると、上長と部下のコミュニケーションに必要な3つのポイントは以下の通りです。

①「他には?」を多用する。
 上長は部下が初めに話したことについて掘り下げてしまうことが多い。だが、いい1on1の定義はただ一つで、1on1が終わった時に部下が「この時間は上長が自分のために取ってくれた時間だ」と思えればいい。上長が欲しい情報を掘り下げるのではなく、「他には?」という質問で、部下から引き出すことが重要。

②部下が気持ちよく話せればそれでいい。
 「イメージできないものはマネージできない」という故・平尾誠二さんの名言があるが、その通りで、もやもやしたものを言語化することが1on1では重要。部下に気持ちよく話して欲しいので、「壁打ちの相手」になり、「今、笑ったね」「この言葉を3回使ったね」と返していくことで、部下が自分で気づいて言語化していく。一方で、育てよう育てようという気持が強い上司ほど、部下の頭の中を読もうとして、詰問の連続になって失敗してしまう。

③ビジネスの場合は行動で終わる。
 話したことを行動しているかどうかがわかるのが1on1だし、その応援もできる。その行動に対するフィードバックを繰り返す。ただ、次回の1on1で上長は部下にどのような一言から始めるべきか。パターン1は「あれ、どうなった?」パターン2は「今日は何を話そうか?」私ならパターン2だ。なぜなら、部下が違うことを話したいかもしれないから。ただ、前回言ったことを忘れたと思われると信頼関係を損ねるので、一番最後に「前回言っていたあれはどうした?」と聞く。

 本間さんによると、1on1に取り組み始めた頃は、もっとコーチングやカウンセリングのスキルを入れ込もうと考えていましたが、最近は「それは間違いで、テクニックを使わずに、部下のことをちゃんと聴くだけでいい」と思うようになったそうです。「上手な1on1をやるために上長と部下の信頼関係が必要なのではなく、上長が部下の話しを聴くことで信頼関係をつくる、そのために1on1がある。それぐらいでいいと最近思う」。また、「上長は部下のことを知らないので、上長と部下の信頼関係がどんどんなくなっている。1on1によって部下のことを知っておくことで、いざという時にこちらの話も聞いてくれる」。とのことです。

 続いて、質疑応答が行われました。

質問1:なかなか腹を割って話してくれない部下はどうすればよいか。

本間氏:それは上長に責任があると思う。相手が疑心暗鬼でいる時に「あなたのためになりたい」といった姿勢をとれば拒まれる。まず信頼関係が必要。そのためには、普段から部下のことをよく見て、知り、その上で声かけをすること。1on1をする前に準備が必要だ。結局、重要なのは、上長がどれだけ部下の立場に立ち、関心を持ち、部下のために時間を使えるか。自分のテクニックに溺れず、部下をしっかり見て関心を持ち、その人に寄り添うことができればよい。ただ、その努力を相手に悟らせてはいけない。

質問2:1on1を最大限に生かすために必要な能力とは何か。また、その能力がない人はどうすればよいか。

本間氏:結局は傾聴、つまりアクティブリスニングだと思う。それは、あいづちであり、質問であり。傾聴はスキルなので、ひたすら練習すれば上手くなる。中途半端にコーチングを学んでいる人よりも、コミュニケーションが苦手な人の方が1on1が上手くなることがある。
また、定期的にやることも大切。1on1の頻度だが、週1回はやるべきだ。毎週10分でも15分でもやれば、部下も話せるようになる。もう一つは、第1回の1on1の時に、「あなたのことを知りたいから自己紹介して」と頼む。そうすると、相当な情報をくれるし、その時にアピールしているものが、その人にとって大切にしているかがわかる。

質問3:大学で運動部の指導をしているのだが、1on1をしている中で、具体的に答えを教えてほしいと言われた時にどうするか。答えを言っていいのかどうか。

本間氏:言わない。少なくとも1回目は答えを言わない。ずっと聞かれたら、わからないと言う。何か言わなければと思いがちだが、一度でも答えを言ったら、切ろうと思っている「依存関係」が逆に始まってしまう。若い人ほど答えを求めて来るが、言わないようにするのが大切。

 続いて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の八田茂氏のご発声で乾杯、再び歓談タイムとなりました。

 21時の閉会時間が近づき、代表 松場からのご挨拶の後、全体写真の撮影を行い、散会となりました。

 これからも引き続き、競技を超えたスポーツ指導者の方々が学び合える場を提供していきたいと考えております。新しい展開も準備しております。

改めて、皆さまのご支援ご協力に御礼申し上げますと共に、今後ともよろしくお願い申し上げます。