「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々、指導者として現在ご活躍の方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回のインタビューは、元バレーボール、ビーチバレーボール選手の大山未希さんです。
姉の加奈さんの影響で小学校一年生の時にバレーボールを始め、中学、高校、東レ・アローズに至るまでエース、セッターとして活躍しました。その後はビーチバレーボールの選手としても活躍し、現在は「ドリームコーチング」や「アスリーチ」、「JFAこころのプロジェクト」などで主に子どもたちの指導に携わっています。
小・中・高で全国制覇、東レ・アローズではVプレミアリーグ三連覇を経験した大山さんですが、「負けず嫌いが日本一に繋がった」とのこと。伸びやかに、しなやかに歩み続ける大山さんのお話を3回にわたってご紹介します。
(2024年8月 インタビュアー:松場俊夫)
今は日本テレビが運営している「ドリームコーチング」などでマンツーマン指導をすることが多いですが、同じく日本テレビがスポーツ庁とコラボしている「アスリーチ」や、「JFAこころのプロジェクト」の夢先生として全国の学校に授業をしたりしています。また、チームに呼んでもらったり、全国各地で開催されるバレーボール教室に講師として行くこともあります。
東レの選手の時から、バレーボール普及活動の一環でもあるバレーボール教室で子どもたちの指導をすることはありましたが、私はもともと人に教えるのは好きでした。小学校の頃から「この子こうしたらいいのに」と思ってアドバイスすると喜んでもらえたりして。人が気づかないことに気づくのが得意だったみたいです。バレーボールのプレーだけではなく、日常生活のこと、例えば、誰かが前髪を少し切っただけで気づきます。その人をちょっと見ただけで気がついてしまうので、街中で知り合いや有名人に出くわすとすぐにわかります。子どもの頃からそんな感じでしたので、逆に良いことだけではなく嫌なことにも気付きすぎてストレスになることもありました。もっと鈍感だったらよかったなぁと。
基本的に、いいなと思ったらストレートに「すごくいいよ」と伝えます。マンツーマンレッスンですと自信のない子が多いのですが、実際にその子たちのプレーを見ると全然問題ないことが多いです。それなのに自信がない。頑張ればできる子ほど自信が持てないのは、おそらくまわりからマイナスな言葉を言われてしまっているからなのでしょう。ですから私はその子たちをすごく褒めます。また親御さんにも、「全然大丈夫です」とプラスの方向に持っていくようにしています。
同時に、私にレッスンを依頼してくださっている以上、良いことだけではなく厳しいことも言います。それはスパルタではなく、その子の成長に必要なことだからです。
褒めるともじもじしていることはありますね(笑)。ですから自分の過去を引き合いに出したりします。すると子どもたちの表情や態度が変わったりします。
褒めることと厳しくすることの割合を特に意識してはいませんが、「褒めて伸ばす」だけではなく、厳しく言わなければならないことははっきり言うようにしています。例えば、挨拶をしてほしい時にはなぜ挨拶が必要なのか、その理由も言います。バレーボールの上達に直接関係ないかもしれないことも、私自身、これまで厳しく指導されて人間が形成されてきたと思っていて、挨拶なども半強制的だった部分もあるかもしれませんが、それが今になって非常に役に立っているのです。
また、子どもたちに言ったことは親御さんにも必ず「こう言いました」と伝えています。厳しいことも言うことで次回のレッスンを依頼してもらえない可能性もありますが、プロの指導者としてはそこははずせないことだと考えています。
周りへの気配りができて視野が広い人であって欲しいと思っています。たまにアスリート仲間とバーベキューをすることがあるのですが、特に指示がなくても、私はお皿を洗う、私はこれをやる、とみんな一斉に動くのです。それは少なからずチームスポーツをやってきたかそうでないかの影響もあるのでしょう。引退してからの会社員生活の中でも、視野の広さや先回りして動けることを褒めてもらっていたので、小中学生の頃からそれができるようになれば、社会に出てからも役に立つのではないかと思っています。
基本的には楽しく接しやすくを心がけていますが、時にはピリッとさせることも大事だと思うので、そういう空気はたまに出したりします。やる時はやる!のメリハリを。
私は小中高と指導者の方々に恵まれてきましたが、中高の先生方、特に小川先生は選手の自主性に任せてほぼ何もおっしゃらず、軌道修正が必要な時しか出てこられなかったです。先生に怒られて「はい!」と言ってる方が選手は楽なのですが、仲間同士で注意をし合わなければならないというもっと厳しい状況でした。学年の上下も関係なく、下級生が上級生に注意することもありました。私もキャプテンを務めていたので強めに注意することも多く怖がられていましたし、嫌われていたんじゃないかな(笑)。でも卒業後に後輩から「後になって未希さんの大変さがわかりました」と言われた時には、報われたような思いがしたものです。(中編に続く)
(文:河崎美代子)
中編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/55-2/
後編はこちらから↓
https://coach-do.com/interview/55-3/
◎大山未希さんプロフィール
元バレーボール、ビーチバレーボール選手
1985年 東京都生まれ
実姉(大山加奈)の影響で小学1年生よりバレーボールを始める。
成徳学園高校(現下北沢成徳高校)では1年生からレギュラーを獲得。
春高バレー2連覇を達成。
ユース、ジュニア日本代表。
2004年東レ・アローズに入団し「V プレミアリーグ」3連覇を達成。
ビーチバレーの選手としても活躍。
小・中・高と全国制覇を果たしており、全てのポジションを経験している。
○Instagram:miki_oyama1003