リレーインタビュー 第6回 中竹竜二さん(前編)

09.16

「コーチ道リレーインタビュー」では、指導者の先達である方々のインタビューをリレー形式でご紹介しています。今回お話を伺ったのは、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターとU20日本代表ヘッドコーチを務める中竹竜二さんです。

 

10年前、ビジネスの世界を飛び出し、指導経験がないまま早稲田大学ラグビー部監督を「カリスマ」清宮監督から受け継いだ中竹さんですが、「フォロワーシップ」というマネジメント手法を活かした組織運営によって、見事チームを大学選手権連覇に導きました。

 

中竹さんのご経験や考え方、指導者を目指す方へのアドバイスを前・中・後編の3回にわたってご紹介していきます。

(2016年8月 インタビュアー:松場俊夫)

 

 

◎コーチングディレクターとはどのようなことをなさるのでしょうか?

 

大きく言えば「コーチのコーチ」です。企業で言えば、採用し育成し評価をしますよね。それと同じです。いいコーチが日本にいないかどうか探し、彼らを評価します。ラグビー代表のカテゴリーは、15人制の本代表男女、U20、高校代表、U17、7人制男女、ジュニアなど10ぐらいあり、そこに適材適所でコーチを送り込みます。日本代表の、例えばエディー・ジョーンズのようなトップの人選は理事の方々で決めますが、15人制の代表以外のコーチの評価のベースは私が作り報告をあげています。
メインで行っているのはコーチの研修ですが、例えばU17が海外遠征する時には帯同し、どのようなマネジメントをしているかを観察し、面談を通じて評価します。

 

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「写真提供:ほぼ日刊イトイ新聞」

 

◎どのような基準でコーチを評価なさるのでしょうか?

 

イングランドやニュージーランドのコーチ評価制度、ビジネスの人事評価を参考に私がつくった基準ですが、

①マネジメントができるかどうか。ゴール設定と準備、振り返りができるかどうか。

②コミュニケーションがしっかりとれるか。

③そもそも学ぶ力があるかどうか。

④タフネスがしっかりあるかどうか。

⑤リーダーシップ、またはフォロワーシップがあるかどうか。

⑥ラグビーコーチングができるかどうか。

要するに、スキルとテクニック、戦略の指導項目は最後になります。

私自身、企業にいたわけですが、海外の指標や、日本の企業のトップエグゼクティブが使っているものをかなり使っています。スキル以外のトレーニングをメインに行っている競技、指導者の指導をできる競技は日本にはほとんどありません。ライセンス制度もないのですが、ラグビーだけは世界的に指導者の指導のメソッドを持っています。これからは他の競技も増えると思いますが。私自身は、コーチのコーチつまりエデュケーターの他に、コーチのコーチのコーチでもあります。会社で言えば、現場にいるのはメンバー、その上に課長、部長、社長、会長がいて、という、言わばガバナンスですね。

 

 

◎コーチ育成において大切にしていることは?

 

指導する前にまず言うのは「自分が学べるちゃんとしたOSを持ってください」ということです。コーチングには唯一の正解などなく、常に変わり続けますから。教えるスキルがうまいというよりも、まず自分が学べるかどうかが大切です。
これまでスポーツ界のコーチの人々は学ばないと言われてきましたが、この5,6年で変わりました。全国的にはまだまだですが、トップリーグのコーチや高校のトップの指導者、私の分身であるコーチは劇的に変わりましたよ。「学ばなければいけない」という姿勢はだいぶ浸透しました。2019年までに50人はグローバルに活躍できるコーチを作りたいです。

 

 

◎コーチたちに「浸透」させる上でご苦労はありましたか?

 

原点は「学ぶ」ことなのですが、大人が学ぶのは子供が学ぶよりも大変なことです。プライドがありますから。成功体験とか理念とか信念とか、良い意味でのプライドもあるのですが、それを崩さなければなりません。そこが難しいのです。
ですから、そのためのメソッドや場作りに力を入れてきました。伝えようとしてもなかなか伝わらないので、とにかく「問いかけ」に力を入れました。以前は皆、私よりも年上でなかなか話を聞いてくれませんでしたから、こちらから聞くしかありませんでした。そこで起こるのは、やっていることと言っていることが違うという矛盾です。ですからその事実を見せます。嘘をついたりごまかしたりする人もいますが、それがいかにダメかということを戦略的に突きつけるのです。逆に、恥をさらけ出して学ぼうという人はちゃんと評価します。私のトレーニングでは、どんなにいいコーチであってもほぼ全員パニックになります。頭が真っ白になります。そうなった時にごまかそうとするか、恥を認めるかで「学び」は全然違ってきます。
彼らには、これまで問われたことがないこと、状況設定が異なること、答えられないような質問をします。「ゴールは何ですか?」「どうしたらよかったですか?」「もっとよくするにはどうしますか?」 シンプルな質問です。「あなたの役割は?」「いま何をしたかったのですか?」「さっきなぜそう言ったのですか?」 みんな答えられません。「言い訳する選手はだめと言っていましたが、言い訳するコーチはどうですか?」とかも。みんなに嫌われながら、それをやっていくうちに土壌ができていきます。

 

 

◎土壌ができるとどのような変化を感じますか?

 

現実的に私の役割としては、代表が一貫して同じ方向性に向かってステップを踏んでいくということをやっています。これまでは「俺は俺のやり方」でしたが、今は一貫しています。早い段階で課題を先取りしています。楽しみになってきました。
一貫するのは戦略・戦術ではありません。コーチとしてコーチのやり方をまず揃える、何人教えるかではなく、どう教えるかにこだわるということです。よく使うのは、ティーチングなのかコーチングなのか、インプットなのかアウトプットなのか、スキルベースなのかテクニックベースなのか、といったことです。テクニックとスキル、戦術と戦略を分け、トレーニングのやり方をかなり共有化します。戦術・戦略でそれぞれのオリジナリティを出しますが、スキルはみな同じように揃えます。代表のカテゴリーは違ってもそれは同じです。

 

 

◎コーチたちに「浸透」させる上で大切にしていることはありますか?

 

私以外の人に実際にやってもらうしかないですね。そして、やってもらうにはそれが大事なことだと思ってもらうことです。コーチは尊い仕事ですから、私は相手をリスペクトします。誇りをもってやってほしいので、現場に介入したくはないです。しかし、コーチングとして「これは必ず守ってください」ということはちゃんと言います。ですが、実際やるときは勝負がかかっているコーチが決めなければならないので、準備段階でどれだけ揃えてあげられるか、支援できるかというのが私の立場です。
人は評価されることをどうしても嫌がりますから、遠征に帯同して「ミーティングに出させてください」と言うと、裏ミーティングを作られてしまうこともあります。聞かれたくないんですね。ですから私が意識しているのは「人手が少ないですから雑用を何でもやりますよ」と、まずチームメイトになろうとすることです。私自身はもうかなり経験を積んでいますから、グランドで評価をしながら、チームのサポートをすることもできます。誰かを評価するとなると、その人にとってプレッシャーになりますが、今はその人を見ていなくても大体わかります。「私はあなたのアシスタントコーチですから」と、仲間であることを非常に意識します。 (中編に続く)

(文:河崎美代子)

 

 

【中竹竜二さんプロフィール】

 

(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター
株式会社TEAMBOX代表取締役

 

1973年、福岡県生まれ。
早稲田大学人間科学部卒業後、単身渡英。レスタ―大学大学院社会学部修了。
三菱総合研究所でコンサルティングに従事した後、早稲田大学ラグビー蹴球部監督、ラグビーU20日本代表監督を務め、「監督の指示に従うのでは無く、自ら考え判断できる選手を育くむ」という自律支援型の指導法で多くの実績を残す。
日本で初めて「フォロワーシップ論」を展開した人のひとり。

 

現在は、日本ラグビー協会コーチングディレクター(初代)として、指導者の育成、一貫指導体制構築に尽力する一方、ラグビー界の枠を超え、民間企業、地方公共団体、教育機関、経営者団体を始め、各方面から講演会・研修・セミナー・コンサルティングなどの依頼多数。
2015年よりU20日本代表ヘッドコーチを務め、ワールドラグビーチャンピオンシップにて初のトップ10入りを果たす。2016年にはアジアラグビーチャンピオンシップにて日本代表ヘッドコーチ代行として指揮をとる。

 

2014年には株式会社TEAMBOXを設立。次世代リーダーの発掘・育成、組織力強化といった課題を根本的に解決するトレーニングを提供している。

 

主な著書に『自分で動ける部下の育て方—期待マネジメント入門』(ディスカヴァー新書)、『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP)など。

 

 

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